糖はアミノ酸と並び生体高分子の主要な構成成分であり、広範な生体内反応に関わっている。糖が関与する生命現象を理解し制御するためには、化学的に純粋な糖関連物質の精密合成が必要となる。しかし、糖は分子内に複数の水酸基を有し、その水酸基が置換される位置や数によって多様性を持つ化合物群であるため、保護/脱保護を駆使して水酸基を区別しながら合成することとなり、煩雑さを極める。本研究では糖鎖上のある特定の糖選択的に化学修飾を行う手法を開発することで、合成法の確立されている糖鎖ライブラリの直接多様化することを目的としている。糖鎖は複数の末端糖を有することがほとんどであり、糖鎖の一部を選択的に化学変換するためには、糖を見分ける手法が必要となる。2023年度は、これまでに開発したアシル化反応条件がアルコキシカルボニル化反応へと展開可能なことを見出し、ラムノシド誘導体の効率的なケージング反応へと展開することができた。領域内共同研究によって、細胞膜上での糖機能の時空間制御が可能な系を構築することができた。また、生物活性分子の新たなケージング法として、インターロック分子であるロタキサンに着目し、特定の条件で分解可能なロタキサンの設計と合成の検討を行った。その結果、簡便に合成及び誘導化が可能なロタキサン合成法を開発し、得られたロタキサンが塩基性条件で分解可能なことを見出した。本手法は新たな生物活性分子の送達技術への展開が期待される。
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