研究領域 | 表面水素工学:スピルオーバー水素の活用と量子トンネル効果の検証 |
研究課題/領域番号 |
21H05099
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
本倉 健 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (90444067)
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研究分担者 |
荻原 仁志 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60452009)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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キーワード | 固定化触媒 / 固体酸触媒 / 担持金属触媒 / 水素移動反応 / アルキル化反応 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究では、アルカンを用いるベンゼンのアルキル化反応において、これまでの触媒系を上回る触媒の組み合わせを検討した。その結果、モンモリロナイト触媒に代えて各種ゼオライト触媒を用いた反応や、担持パラジウム触媒に代えて他の貴金属触媒を用いたときに触媒活性が向上することを見出した。またベンゼンの代わりに使用可能な芳香族化合物のスクリーニングを実施した。関連するモンモリロナイトを中心とした固体酸触媒を用いる反応系に関して、査読付きの学術誌に総説1件を発表している。 固体塩基触媒を用いる水素移動反応系に関しては、ハイドロタルサイト表面においてMPV型の水素移動反応が良好に加速されることを見出しており、特にキノリン誘導体の合成に関して高活性を示す触媒系に関して現在論文を投稿中である。加えて、金属ケイ素表面で生成する活性な水素種と、その二酸化炭素還元反応への応用に関しても触媒系を確立しつつある。その他に、固体表面に金属錯体を固定した触媒に関しても合成反応への適応を検討し、関連する成果に関して原著論文2件を学術誌に発表した。また、これらの研究成果に関して国内外の学会・シンポジウムにおける招待講演・一般講演・ポスター発表等での成果発表を実施済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素スピルオーバー現象が関与する反応系として、固体酸触媒と担持金属触媒を用いる系において、従来のモンモリロナイト触媒と担持パラジウム触媒を用いる反応系の触媒性能を大幅に凌駕する触媒の組み合わせを見出した。さらに、ベンゼンだけでなく、合成化学的に有益と思われる置換ベンゼンやヘテロ原子を含む求核剤の反応へと展開が可能であることを見出した。また、関連する固体酸触媒や担持金属触媒の成果に関して、査読付き論文3件を発表した。加えて、固体塩基表面において水素移動反応が迅速に進行することを見出した。これらの研究成果に関して国際・国内学会において発表済みである。以上の成果より、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究進展で得られた成果に関して、未発表のものに関しては早急に学術論文の執筆を行い、査読付きの学術誌への投稿を実施する。また、固体酸触媒と担持金属触媒が関与する反応系に関して、複数の活性点が同一粒子に存在する触媒を新たに設計・開発し、水素スピルーバーの速度が律速にならずさらに高い活性・速い反応速度を示す触媒の開発を試みる。アルキル化反応の基質に関しては、より炭素鎖の短いアルカンへと展開し、工業的に有用な化合物合成に挑戦する。また、水素スピルオーバー現象を反応場分離へと展開するために、膜を活用した反応系の設計を実施する。これらの研究は、領域内の材料開発や計測を専門とする研究者と密に連携しながら進める。担持金属錯体や固体塩基触媒を用いる反応系に関しても、水素移動現象が関与する新たな反応系へと展開する。
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