研究実績の概要 |
2022年度の研究では前年度に引き続き、固体酸触媒表面によるアルカンの活性化と、水素の逆スピルオーバー現象を活用したアルカンとベンゼンの直接的カップリング反応に関して検討を行った。特に、固体酸触媒の機能と担持金属粒子の機能を複合化した触媒の開発に成功し、表面に存在する活性な水素種の寿命も含めた詳細な構造解析を領域内の共同研究として実施した。この研究成果に関して、複数の学会発表を実施するとともに、領域内の共著論文を準備中である。さらに、最も活性化が難しいとされるメタンの反応においても固体酸触媒と金属ナノ粒子との組み合わせが効果的であることを見出した。この触媒系では、メタンの脱水素カップリング反応によってエタン・エチレンを選択的に合成することに成功しており、またメタンと金属種との反応によって生成する水素種を用いることで触媒反応に高い選択性を示すバイメタル粒子が形成されることを見出し、現在論文投稿中である。加えて、固体表面で形成される水素種の機能を活かした触媒的還元反応にも取り組み、特にシリコン表面で活性なヒドリド種を発生させることに成功し、これを還元剤とする二酸化炭素の還元反応・還元的機能化反応が効率よく進行することを見出した(Energy Adv. 2022, 1, 385; Commun. Chem. 2022, 5, 150)。また、プロトン交換膜を用いる電解反応系においてもアルコールの脱水素反応が効率よく進行することを見出し、論文発表を実施した(Sustainable Energy & Fuels, in press)。
|