研究実績の概要 |
大腸菌、枯草菌などのゲノムDNAから、分子クラウディング環境やカリウム濃度に応答して安定性の変動を示すグアニン四重鎖(G4)構造を網羅的に解析した結果、2枚のカルテットから構成されるG4構造が多数形成されることが確認された。また、グアニンの連続配列の間に長いループ配列が存在する場合でも、安定なG4構造を形成し得る配列が見出された。このことは、これまで考えられてきた以上に多くの領域でG4構造が形成され、「多元応答」として遺伝子の発現調節に関与し得ることを示している。G4構造については、微生物種を中心としたゲノム配列のデータベースからG4構造形成可能領域の抽出が完了しており、ゲノム上でのG4構造の数や場所、予測されるG4構造の安定性やコードされている遺伝子種別などを、個別に、あるいは生物種間で比較しながら解析できる新たなデータベース(G4 database)の開発を進めた。 G4構造とは異なる四重らせん構造であるi-motif構造について、特定の分子との相互作用を解析する研究も進め、G4構造リガンドとしても知られるいくつかの化合物が、i-motif構造にも相互作用し得ること、その相互作用はi-motif構造のループ配列に大きく依存することを明らかにした。 RNAが形成するシュードノット構造について、分子環境に対する熱安定性の応答を解析した。その結果、シュードノット構造の鍵となるループ領域に対する塩基対形成が、水分子の活量が低下し、排除体積効果が大きくなるクラウディング環境において安定化されることを明らかにした(論文投稿中)。また、バルジを含むRNA構造について、そこに相互作用する天然化合物に化学的な修飾を施し、RNAに対する結合親和性を高めることで遺伝子の発現を効果的に抑制することにも成功した(New J. Chem., 48, 8529 (2024))。
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