研究実績の概要 |
本領域研究では、核酸の構造を介した遺伝子発現機構「多元応答ゲノム」機構を明らかにする。そのために、A02班では、環境に応じた核酸構造変化機構を解明し、核酸構造を予測できるデータベースの構築を担当する。 2023年度は、化学、情報科学、植物科学、錯体化学の連携により、細胞内環境に応答して多元的に変動する核酸構造に焦点を当て、核酸構造に依存した遺伝子の発現調節(多元応答)の分子機構の解明を目指した。その結果、ヒト細胞内での遺伝子発現を制御しているDNA/RNAのハイブリット構造などの特定の核酸構造の形成や安定性を予測できるパラメータを開発した(J. Am. Chem. Soc. 145, 23503、2023, Nucleic Acids Res. 51, 4101, 2023)。さらに、細胞内の核酸構造を物理化学的に評価し、予測する手法を開発するため、細胞内環境評価系を構築した。本評価系を用いることで、細胞内でのG-四重らせん構造とイオンの相互作用による安定化機構を明らかにした(J. Am. Chem. Soc. 146, 8005 (2024))。また、細胞内の混雑した環境による効果を厳密に評価するために、ナノ材料として使われている金属有機構造体などを用いて、細胞内空間を模倣した細胞内環境評価系も構築した(Inorganics,12, 21(2024), 7th Gratama Workshopにて発表)。これらのデータとA01班によるゲノム解析データおよびA03班によって得られた様々な生物種の実細胞内の核酸構造に応じた遺伝子発現変化の情報を集約しデータベース化した。データベースを領域HPから参照できるように、多元応答ゲノムバンク(DiR-GB)を開設し(https://g4vista.med.niigata-u.ac.jp/)、解析できた生物種のデータから順次公開している。
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