研究領域 | 炎症性組織レジリエンスと組織障害エントロピーの統合的理解と炎症収束学の創成 |
研究課題/領域番号 |
21H05123
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三上 洋平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (80528662)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 1細胞遺伝子発現解析 / 線維芽細胞 / 神経 / 線維化 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(IBD)や手術に続発する腸管線維化は、その後の腸管狭窄や腸閉塞の原因となる。すなわち、炎症性腸疾患の治療の進歩に伴い、自覚・他覚所見や臨床検査値の改善により臨床的には一見「収束」したように見える炎症であるが、様々な組織常在性の免疫細胞およびストローマ細胞集団が炎症についての情報を記憶しており、慢性炎症後の腸管内における不可逆的な組織障害エントロピーの増大が進行している可能性が示唆される。肝臓の線維化病態である肝硬変においても同様のメカニズムの存在が示唆され、本検討課題では、組織障害エントロピーの統合的理解を通じて、免疫学的、分子生物学的、微生物学的に、消化器臓器における炎症・再生・線維化の克服を目指す。 腸管組織常在細胞のうち、まず腸管ストローマ細胞に着目して研究を開始した。本年度は、マウスの腸管検体および、およびヒト患者より供与いただいた腸管切除検体を、ストローマ細胞集団をFACSにより単離、1細胞遺伝子発現解析を行った。得られたデータを既に研究室内で確立している解析pipelineを用いて検討を行ったところ、従来広義の線維芽細胞の定義であるVimentin + Desmin -集団の中には、線維芽細胞の他にもグリア細胞、血管周皮細胞、平滑筋細胞など多様な集団が存在していることが明らかとなった。さらに解析を進め、腸管局所における線維芽細胞の多様性とマウス・ヒト間での相同性および相違性を明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は、計画通りに1細胞遺伝子発現解析のライブラリ作成を行い、Preliminaryな解析結果を出すことに成功した。ライブラリ作成と解析は想定以上に進行している。さらに、シンポジウムの開催、定期的なメイルおよびテレカンファレンスを通じて班員の共同研究の基盤を醸成し、次年度以降の飛躍につながる結果と考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の克服のために、腸管線維化モデルの樹立、肝炎・肝線維化モデルの解析をすでに開始しており、線維芽細胞および血球細胞に対して、FACSによる表面抗原および転写因子の解析、1細胞遺伝子発現解析による網羅的遺伝子発現解析を行なっていく。また、発見したサブセットの局在を明らかにするために顕微鏡学的検索も行ない、これらのmRNA、タンパク質、局在について3次元的解析を経時的に行なっていくことで、組織障害エントロピーの解明を目指す。
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