ショウジョウバエを用いたゲノム規模での行動学的スクリーニングから、新規の睡眠誘因遺伝子「nemuri」を同定することに成功した。興味深いことに、Nemuriは172アミノ酸からなる比較的小さなポリペプチドで、細胞内で凝集体構造を取ることが判明した。本研究では、Nemuriの高次構造体形成活性に着目し、凝集体構造に含有される因子を同定し、その機能を解析する。また、Nemuriペプチドの物性を制御・設計することにより、睡眠誘導活性(どのくらい深く・長く寝るのか)を操作することを目標とする。これにより、Nemuriをモデルポリペプチドとした時間タンパク質の備えるべき特性を生化学的に明らかにした。 1) Nemuriの細胞内・外での挙動の理解: NemuriはRGGリピートを含むNemuriのカルボキシ末端側は高い信頼度で天然変性領域を構成すると予想される。近年、天然変性領域は凝集体や液液相分離(LLPS)など、ポリペプチドの高次構造形成と深い関係を持つことが着目されている。そこで、まずNemuriの発現を一過的に誘導したショウジョウバエにおける睡眠上昇とNemuriの凝集体形成を経時的に調べることが可能か試みた。 2) Nemuri複合体の同定: 睡眠誘導が神経系の多様な生理活性変動を伴うことから、Nemuriの凝集体は、様々なタンパク質およびRNAを含む可能性が高い。そこで神経細胞内でNemuriと協調して作用する結合因子を、ビオチンライゲースを用いた近傍化標識方法によってタンパクの回収・精製をおこない、質量分析で同定を試みた。
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