計画研究
植物の成長を実験室だけでなく圃場環境でも促進する糸状菌Colletotrichum tofieldiae (Ct) のCt4株について、その植物成長促進機構を探索した。本年度は、Ct4株の窒素が枯渇した環境下での植物成長促進効果を探るため、安定同位体15Nでラベルした硝酸を菌糸に与え、15Nが植物へと供給されるかどうかについて詳しく調査した。その結果、Ct4株は近縁のC. incanumと比較して顕著に15Nを植物へと供給することが判明した。一方で、この15N輸送にシロイヌナズナの硝酸トランスポーターNRT2.1/NRT2.2/NRT2.4/NRT2.5は必須ではないことが判明した。次に、リン欠乏環境においては植物のトリプトファン由来の二次代謝物がCtの過剰増殖を抑え共生関係を維持するためには必須であることが先行研究により明らかになっている。一方で、窒素枯渇条件ではCtは該当二次代謝物が欠損した変異体においても若干の低下は認められるものの植物成長を促し、Ctによって根圏に誘引される細菌群の1種がいると野生型と遜色ないレベルで植物成長を促すことが判明した。さらには、Ctはアブラナ科植物だけでなく、キク科のレタスの植物成長促進を窒素枯渇かつ有菌条件では促すことが明らかになった。以上から、窒素枯渇条件で他の微生物が存在する環境では、植物のトリプトファン由来の二次代謝物は必須ではないことが示唆され、この栄養依存的かつ微生物依存的な仕組みがCtがアブラナ科植物を超えて植物成長を促すことができる基盤であることが示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 備考 (3件)
Nature Communications
巻: 14 ページ: -
10.1038/s41467-023-40867-w
Physiological and Molecular Plant Pathology
巻: 125 ページ: 102021~102021
10.1016/j.pmpp.2023.102021
https://www.kakusei-plant.com
https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/hiruma/
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0109_00091.html