研究領域 | メガダルトン生命機能深化ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
21H05157
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
森 貴治 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (90402445)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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キーワード | 分子動力学計算 / タンパク質複合体 / 立体構造予測 / ベイズ推定 |
研究実績の概要 |
細胞内の生命現象を理解するためには、各現象の過程で形成されるタンパク質複合体の構造・ダイナミクスを調べることが重要であり、クライオ電子顕微鏡や高速原子間力顕微鏡 を用いることで可能になってきた。しかしながら、構造解析実験や生化学実験データには、分子のダイナミクス、構造多型、ノイズ、エラーなどの様々な情報が含まれる。メガダルトン級タンパク質複合体を対象とする場合、実験データから分子機構を解明することは従来よりも困難となり、構造モデリング時にノイズやエラーを自動的に除外するような工夫が必要である。本研究課題では、ベイズ推定を介して実験データを分子動力学 (MD) 計算に取り込むことを目指しており、本年度は、ベイズ推定に基づくタンパク質立体構造予測法の1つである MELD 法を分子動力学計算プログラム GENESIS に実装した。MELD 法では、複数の束縛条件がある場合、エネルギーに従って束縛条件をソートし、ノイズやエラーに由来するようなエネルギーが高い束縛を除外する。本年度は、距離拘束を利用する MELD 法を GENESIS に導入し、レプリカ交換法などの拡張アンサンブル法と組み合わせられるようにした。また、小ペプチドを対象として、実際にエラーを含む疑似的な実験データを用いて立体構造を予測したところ、MELD 法で自動的にエラーデータを除外しながら構造を予測することができ、正しく GENESIS に実装されたことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では、開発研究と応用研究の両方に取り組む。開発研究では、ベイズ推定を利用する実験データ駆動型シミュレーション法を開発し、それを実行するための構造モデリングプラットフォームを GENESIS 上に構築することを目的としている。応用研究では、開発した手法およびプログラムを用いて、実際にメガダルトン級タンパク質複合体の動的構造の解析と機能の理解を目指している。本年度は、特に開発研究に注力し、ベイズ推定を利用した MD 計算法の1つである MELD 法を GENESIS に導入し、レプリカ交換法などの拡張アンサンブルシミュレーション法と組み合わせることに成功した。また、AMBER や CHARMM などの全原子力場モデル、粗視化モデル、GBSA, EEF1, IMM1 モデルなどの様々な溶媒連続体近似モデルと MELD 法を組み合わせて、実験データを比較的低計算コストで解析できるようにした。したがって、開発研究は順調に進んでおり、次年度以降に行う応用研究の準備はほぼ整いつつある。そのような意味で、研究は順調に進んでおり、2022年度においてプログラム開発に関する論文を執筆する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実装した MELD 法では、現在のところ距離情報に基づく束縛条件を利用できる。今後は、NMR実験データ、クライオ電顕像、高速 AFM 像などを解析することを想定しており、距離情報だけでなく、二面角や3次元位置情報、2次元位置情報を MELD 法で解析できるようにする予定である。また、並列計算アルゴリズムを導入することで、より高速に MELD 計算が行えるようにする。応用研究として、研究領域内の実験グループと連携し、Secトランスロコンや核酸複合体などのメガダルトン級生体分子システムの動的構造解析を行う予定である。また、開発したプログラムは、実際に GENESIS バージョン 2 以降の新機能としてソースコードも含めて公開する予定である。
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