計画研究
これまでの遺伝子発現制御の研究においては、核内で一連の転写のプロセスが連続反応によって進行し、RNAが合成されると考えられてきた。ところが、われわれの最近の研究によって、転写制御は従来考えられてきたようなモデルのみでは理解が困難であり、「転写プロセス全体が密な相互連携によって一体化(Unity: ユニティー)し、遺伝子発現を制御する機構」(転写ユニティー機構)の存在が強く示唆された。さらに、転写ユニティー機構では、転写制御因子(タンパク質、ゲノムDNA、RNAを含む)間における相互作用(多因子間相互作用と呼ぶ)によって転写プロセス全体が非常に密に連携し合っており、1つの転写プロセスが他の全ての転写プロセスに影響し得る一体化状態と考えられた。本研究では、転写ユニティー機構における多因子間相互作用において重要な役割を果たすメディエーター複合体に着目し、これらの因子の本機構における役割を解明し、転写ユニティー機構の分子メカニズムを明らかにすることを目指した。この研究によって、メディエーター複合体は遺伝子によって、転写の開始から、伸長、終結までを統合的に制御することが明らかとなった。さらに、そのような遺伝子群では、転写終結が破綻することによって、転写全体が減少することも明らかとなった。今後は、このようなメディエーター複合体を中心とする転写ユニティー機構を、分子から細胞、組織レベルまで解明する。
2: おおむね順調に進展している
メディエーター複合体と相互作用する因子をin situビオチン化法によって網羅的に同定した。すると、RNA結合タンパク質や転写終結因子、スプライシング因子などが多く同定された。さらに、新生RNA鎖の産生を転写伸長阻害剤などの処理によって阻害すると、メディエーター複合体をハブとする多因子間相互作用も阻害されることがわかった。このように、メディエーター複合体を中心とする転写ユニティーにはRNAが重要な働きをすることもわかってきた。
今後はメディエーター複合体を中心とした転写ユニティー機構を解明するために、多因子間相互作用を形成しないメディエーター複合体の変異型細胞を作製し、それを用いて、転写ユニティー機構への影響を解明する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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