研究領域 | あいまい環境に対峙する脳・生命体の情報獲得戦略の解明 |
研究課題/領域番号 |
21H05170
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
本田 直樹 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (30515581)
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研究分担者 |
山田 恭史 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (80802561)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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キーワード | 自由エネルギー原理 / 数理モデル / 機械学習 / 報酬 / 好奇心 |
研究実績の概要 |
変化する複雑な環境において、脳は限られた時間・計算資源のもと認識・意思決定を行っている。そのため、完全な最適性・合理性を達成することが困難となり、心の葛藤や迷いが生じる。昨年度までに、自由エネルギー原理をもとにして、心の葛藤を伴う認識・意思決定を表現する新しい意思決定モデルの構築を行った。本年度は、このモデルをもとにして、行動データからエージェントの環境に対する認識やその自信、好奇心を推定する機械学習法の開発を行った。具体的には、動物を観察する第三者の立場からの状態空間モデルを作成し、粒子フィルターおよびカルマンスムーザーを組み合わせた手法を開発した。この手法をラットのバンディット課題の行動データに適用したところ、ラットの好奇心の値はほとんどの試行で「負」であると推定された。すなわち、実験で用いたラットは報酬確率の認識があいまいな選択肢を避け、認識が明確な選択肢を好んで選択する、保守的な性格を有するということである。この保守的な行動は、動物が報酬を安定して得ようとするためのものと解釈することができる。また、報酬確率の変化に伴って、好奇心が上昇した。この結果は、動物は環境の変化を素早く認識し、好奇心を適応的に制御していると解釈することができる。さらには、推定した好奇心と認識とを比較したところ、ラットは報酬確率の認識があいまいになると、好奇心のレベルを積極的に上昇させた。したがって、動物は現在の認識と不確実性の度合いに応じて、好奇心を適応的に制御していることを明らかにした。それに加えて、バルーンアナログリスク課題における意思決定の数理モデル化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、動物の行動データから動物の認識・自信・好奇心の解読に成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
バルーンアナログリスク課題における意思決定行動データから、認識や自信、好奇心の葛藤の解読を目指す。
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