研究領域 | 「当事者化」人間行動科学:相互作用する個体脳と世界の法則性と物語性の理解 |
研究課題/領域番号 |
21H05172
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
川脇 沙織 (田中沙織) 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究室長 (00505985)
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研究分担者 |
中村 優子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00610023)
松井 彰彦 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30272165)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | 大集団脳科学 / 強化学習理論 / ゲーム理論 / 摂食行動 / 思春期 |
研究実績の概要 |
田中は、個体―世界の相互作用ループの個体脳のモデルとして、2つの要素(a. 強化学習における予測誤差を用いた学習機構 (線条体、ドーパミン系を含む基底核)、b.環境の内在化機構(前頭葉))を土台とし、このモデルのパラメータを行動データから推定するための実験パラダイムと解析プロトコルを確立した。具体的には、強化学習モデルのEligibility traceを予測誤差が正の時と負の時で異なるトーレス減衰係数を設定し、それを測定するための実験プロトコルとして、8つの図形に異なる報酬の大きさ、損失の大きさ、報酬提示の時間遅れの長さを設定した意思決定課題を策定した。また内在化機構として、環境モデルを用いたモデルベース強化学習を検討し、モデルベースの優位性を調べる実験パラダイムを策定した。
松井は、個体―世界の相互作用ループの進化の影響をゲーム理論を用いて明らかにするため、進化ゲーム理論の理論および応用研究を発展させた。具体的には、 村上愛を招へいし、当該研究を行った。その結果、村上による理論論文一篇が完成した。また、 奥山陽子および村上と協力し、日本の医師名簿の電子化およびデータクリーニングを行った。
中村は、Weight stigma(体型に関する偏見)と体重や食生活との関連を調査するための評価項目の決定を行う。次年度から、fMRI実験により、Weight stigmaや食生活と関連する脳活動領域を決定する予定であることから、fMRI実験課題を確立する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに研究が進展している。田中は、個体脳モデルのパラメータを行動データから推定するための実験パラダイムと解析プロトコルを確立した。松井は、村上愛を招へいし、当該研究を行った。その結果、村上による進化論的ゲーム理論を用いて専門家の「声」の効果を分析した理論論文一篇の第一稿が完成した。また、 奥山陽子および村上と協力して医師名簿の電子化およびデータクリーニングを行った。中村は、Weight-stigmaの評価に使用する指標としてThe Weight Self-Stigma Questionnaire (WSSQ) (Lillis et al. 2010) )を決定し、著の著者たちの協力のもと、WSSQの日本語版を作成した。今後、日本語版の妥当正の検討も行う。
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今後の研究の推進方策 |
田中は、R3年度に確立した個体脳モデルと実験プロトコルを実験によって検証する。松井は、米国エモリー大学のIn-Koo Choとの共同研究を開始する。とくに見た目の相違のみから差別が必然的に生じる動学モデルを構築する。 そのためにCho氏と複数回にわたるミーティングを持つ。また、引き続きノースウェスタン大学留学中の村上愛を招へいする。また、ウプサラ大学助教授の奥山陽子とも連携し、文化と制度の進化を理論・実証的に分析する。中村は、摂食制御に関わる神経回路を描出するための機能的MRI課題およびMRI測定のためのパラメーター決定を行う。R4年度の後半では、R3年度に決定した心理指標と機能的MRI実験を行い、摂食制御の神経回路に、weight stigma等の社会心理的要因がどのように関連するのか検証する。
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