研究領域 | 「当事者化」人間行動科学:相互作用する個体脳と世界の法則性と物語性の理解 |
研究課題/領域番号 |
21H05176
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳下 祥 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (50721940)
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研究分担者 |
多田 真理子 東京大学, 相談支援研究開発センター, 講師 (70758193)
植松 朗 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任講師 (90716242)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | ドーパミン / 皮質脳波 / 聴覚系 / PTSD / 消去 |
研究実績の概要 |
柳下は個体ー世界相互作用による個体脳への影響を調べるためにマウスを用いて認知課題中およびホームケージでの行動をカメラを用いて行動およびフォトメトリーによりドーパミン活動を長期記録する実験系を構築した。これにより安定的に長期の行動およびドーパミンの光測定が可能となった。さらに得られた大量データを保管・解析するためのGPUを用いたパイプラインを整備した。この結果、認知課題中の行動を詳細に解析が可能となり、個体ー世界相互作用の中で環境に対して行動を変化させていくトラジェクトリーに明瞭な個体差が描出できることが新規にわかってきた。 多田は個体ー世界相互作用における法則的処理と物語的処理の相違について音刺激を複雑にした新規課題を用いて、複雑な予測活動が聴覚野から広域に観察されることを見出した。物語的処理の基盤について、A03と協議し、聴知覚の親近感処理が関与する可能性を検討した。 植松は個体ー世界相互作用において、恐怖情動の再編モデルを用いた。再編において法則性に関わる神経機構において見出した雌雄差が循環する性ホルモンによって機能をスイッチする可能性を検討した。次に、物語性を観察するための長期記録装置を用いて実験中や実験後における多領域の脳波計測を行った。また、幼若期ストレスを与えることで成熟時にPTSD様症状を示すモデルにて、遺伝子発現変化の検討を行った。 また、A01, A03, B01との議論により、当事者化研究における動物実験の位置づけの検討を重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
柳下は個体ー世界相互作用による個体脳への影響を調べるための系の改良を重ね、効果的で安定的なデータ取得および解析が可能になってきた。さらにこれにより実際に新たな知見を得ており、当初目標に向けて研究は進んでいる。 多田は個体ー世界相互作用における法則的処理と物語的処理の相違について聴覚系での振る舞いを調べた。昨年度構築した聴覚野と前頭葉の領野間回路を計測する広域皮質脳波計測系を用いて、複雑な音刺激の変化を検出する新たな課題中の脳活動について調べた。物語的処理の基盤について、A03と協議し、聴知覚の親近感処理と信頼性やスティグマの関連を調べる新たな計画を立てた。 植松は個体ー世界相互作用において、法則性と物語性の神経機構解明を進めた。去勢や卵巣除去を行ったマウスを用いて恐怖消去におけるD1,D2神経細胞の機能を検討した。それぞれ同性の偽手術群と比べて行動に変化は見られなかった。幼若期ストレスによるPTSDモデルにおいては前頭前野における遺伝子発現を検討し、シナプスや神経伝達物質に関係する分子が変化することを明らかとした。
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今後の研究の推進方策 |
柳下はこれまで構築した系で得られたデータにおいて個体の行動トラジェクトリーを解析する手法の開発を進める。その上で、さまざまに個体特性を変化させた条件でどのようなトラジェクトリーの多様性が生まれるのかを観察していき、最終的には神経基盤との対応をとる。 多田は今後、複雑な音刺激を用いた新規課題における法則性処理の解析を進め、さらに物語性処理が変化の検出に用いられているかを調べる。聴知覚の親近感処理と信頼性やスティグマの関連について調べる新規課題を作成する。 植松は恐怖消去中において法則性に関わる回路が雌雄脳においてどのように異なるかを回路レベルで解明する。情動記憶の物語性について、齧歯類において情動記憶を振り返る神経機構があるかを電気生理学的に探索する。幼若期ストレスが消去の法則性・物語性に与える影響について分子基盤の点から検討する。
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