研究実績の概要 |
積層造形310Lステンレス鋼の微細構造解析ならびに革新的三次元組織再構築法の構築を進め、以下の成果を得た。溶融地境界内に生成する凝固方向に伸長したセル状組織内部を透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)で慎重に観察を進めたところこれまでに報告のなかった変調構造が生成していることを突き止めた[1]。次年度以降、この変調構造の生成機構とより詳細な構造解析を進め、固液界面および固相内での温度勾配が通常の凝固条件よりも著しく高い超温度場における凝固組織の毛衛星過程の全体像把握に努めたい。同時に、本材料の三次元組織像を把握することも凝固組織形跡機構を理解するうえで重要と考えて、ただし従来のシリアルセクショニング法やトモグラフィ法といった特殊な装置を使う手法とは全く異なる超効率的三次元組織構築法SliceGAN(敵対的生成ネットワークGANの一種)法を本合金系に適用し、グレースケール画像であっても垂直な三つの断面像から内部三次元像を構築できることを示した[2]。ただし、デフォルトの設定では三次元像の精度が十分ではないことも判明し、次年度以降高精度SlcieGANのアルゴリズム構築を進める。 一方で、急冷凝固時の凝固組織を動的観察することはかなり困難であり、この非平衡状態での凝固組織形成過程を再現する非平衡フェーズフィールド法の構築にも着手した[3]。この過程で、熱力学的データベースからデータを読み取ることがシミュレーションの律速過程であることが判明したため、次年度は熱力学的データベースを機械学習に入力し、高速でデータを読み取れる環境づくりを進める。 [1]Fei Sun, et al., Materials Transaction, 2023, in press. [2]Keiya Sugiura, et al., Advanced Theory and Simulations, 2022, 5(7), 2200132 [3]Masahito Segawa, Akinori Yamanaka, Materials Transaction, 2023, in press.
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