研究領域 | デジタル化による高度精密有機合成の新展開 |
研究課題/領域番号 |
21H05208
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大嶋 孝志 九州大学, 薬学研究院, 教授 (10313123)
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研究分担者 |
森本 浩之 九州大学, 薬学研究院, 講師 (20593867)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | 化学選択性 / 触媒制御 / ベイズ最適化 / 官能基評価キット / デジタル創薬 |
研究実績の概要 |
情報科学(機械学習)によるアプローチは、人間が実験科学を通じて行うのと同じ帰納的アプローチであり、極めて利用価値が高いと期待されるものの、有機化学への機械学習の利用は極めて限定的で、いまだ未発達である。そこで、本計画研究では、革新反応開発に機械学習を徹底活用(実験科学と情報科学の異分野融合)することで、化学選択性の触媒制御法開発の超加速を実現し、その基礎となる官能基標的触媒を網羅的に創出することを目的とし、(1)機械学習による反応条件最適化の超加速、(2)官能基評価キット活用による化学選択性の網羅的データ集積、(3)機械学習による新反応制御因子の顕在化、(4)機械学習によりデザインされた革新分子の合成と評価、(5)開発した革新反応の反応モジュール化とフロー反応での活用の検討を行う。R3年度(6ヶ月間)は主に以下の検討を行った。 (1)実験化学者が日常の研究生活の中で機械学習を取り入れながら研究を行うことができるよう、研究環境の整備を行なった。①電子実験ノートを導入し、全ての実験結果を電子実験ノートに集約するシステムの構築を行なった。②ベイズ最適化を行うためのPythonの利用環境を構築し、勉強会を複数回実施した。③機械学習の説明変数として利用するための量子化学計算の環境整備と勉強会を行った。④①から③の環境整備を基盤に、連続型変数のベイズ最適化を活用した反応条件最適化を行った。④離散型変数、特に溶媒効果の機械学習による最適化を促進するための検討を行なった。 (2)総括班で構築した官能基評価キットを活用し、官能基の反応に与える影響の網羅的情報収集を行なった。 (4)デジタル創薬の共同研究体制を構築し、情報科学によって提案された化合物の合成と生物活性評価を行った。 (5)フロー合成装置を導入し、大量の高品質データを容易に得ることを可能とする、システム構築を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)まず、実験化学者が日常の研究生活の中で機械学習を取り入れながら研究を行うことができるよう、研究環境の整備を行なった。具体的には、電子実験ノートの導入、ベイズ最適化を行うためのPythonの利用環境を構築、量子化学計算利用の環境整備を行った。続いて、連続型変数(時間、温度、試薬の当量比など)のベイズ最適化中心に検討し、新規触媒反応の反応条件最適化に活用した。一方で、反応条件の最適化には、溶媒効果や触媒構造などのデジタル化が困難な離散型変数の最適化も重要であり、それらの離散型変数のをどうデジタル化するかの検討を行った。溶媒効果に関しては、実測及び量子化学計算によって得られた物理化学的パラメータの活用や、Fingerprintを活用した手法などを検討し、イミン合成反応において最適溶媒の提案に成功した。触媒構造に関しては、遷移状態モデルを活用した機械学習の検討を行っている(A03班矢田との共同研究)。 (2)総括班で構築した官能基評価キットを活用し、20種類以上の官能基の、反応に与える影響の網羅的情報収集を行なった。まず、代表例としてSuzuki-Miyaura Cross-CouplingとProline Aldol反応を選択し、評価キットによるスクリーニングを行ったところ、ある程度予想された官能基許容性とともに、これまで影響がないと思われていた官能基の多くで、反応速度を低下させる負の添加影響があることが判明した。また、幾つかの官能基で予想外の正の添加効果も確認されており、これは、今後、(3)の新反応制御因子の顕在化につながる結果である。 (4)PPI阻害剤をターゲットとした低分子化合物のデジタル創薬研究をA03宮尾、松原も含めた共同研究体制で実施し、情報科学によって提案された化合物の合成と生物活性評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度はR3年度の検討結果をもとに、(1)から(5)の項目に関して、以下の検討を行う。 (1)多くのパラメータの最適化が必要な化学選択的電解酸化反応において連続型変数のベイズ最適化を中心に検討し、反応条件最適化の効率化を図る。また、溶媒効果に関してさらに様々な機械学習の手法を検討し、予測精度を高めた手法を確立する。 (2)官能基評価キットを活用し、さらに多くの反応の化学選択性の網羅的情報収集を行う。反応の種類を拡張するとともに、見い出した正の添加効果に関して精査し、新たな触媒系の開発につなげる。 (3)計算科学と情報科学を融合させ、先に開発した不斉触媒反応の主制御因子の顕在化を行う。 (4)現在進めているデジタル創薬に関する共同研究をさらに推進する。特に、機械学習によって提案された創薬リードの合成と生物活性評価を推進する。 (5)エステル交換反応、分子内環化反応、電解フロー反応などのフロー反応での最適化を行う。
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