計画研究
1.触媒型反応のための電解モジュールを使った反応の機械学習による反応最適化電解反応はエネルギー効率の悪い熱的エネルギーに頼らない本質的にエネルギーロスの少ない手法であるが、電極の電位の設定や電気量、さらにそれぞれの条件で溶媒や支持電解質などの電気化学的な反応パラメータが多く、これらを最適化に多くの時間と労力を費やす場合が多い。本年度は、これらの反応パラメータを連続的に変化させることのできる電解フローセルを用いて、多量のデータを効率よく取得し、機械学習を使って最短時間で反応の最適条件へと導く研究を行った。具体的な反応として、触媒量の電子で駆動するトリメチルシリルシアニドとカルボニル化合物の反応およびアセトニトリルやニトロメタンとカルボニル化合物の反応を取り上げ、A02班の滝澤らとの共同研究により、機械学習を用いて、最も収率のよい条件を短時間で見つけることが可能となった。また、同じフローシステムを用いて、時間当たりの生産量を最大限にする条件も機械学習を使って容易に見出すことことができることも示すことができた。2.条件探索を迅速に行うための最適な反応モジュールを開発一般に、フロー反応系でのデータ取得は人の手を介さないために再現性が高く、また、パラメータを変えて連続的にデータを取得することができるので、ネガティブデータを含めて大量かつ信頼性の高いデータを得るのに向いている。本年度はインライン分析をフロー系に組み込んだ、データのリアルタイムでの取得のためのシステム構築を行い、ReactIR(総括班の予算で購入)を中核としたフローシステムを作製した。今後は、触媒を担持した固体相を充填したカートリッジ型の反応モジュールを作製し、これを用いて条件の異なる反応を連続的に行い、高い質と豊富な量のデータを取得するシステムを完成させる予定である。
2: おおむね順調に進展している
上記のように、反応パラメータを連続的に変化させることのできる電解フローセルを用いて、多量のデータを効率よく取得し、機械学習を使って最短時間で反応の最適条件へと導く研究を行い、十分な成果がでているため。また、インライン分析をフロー系に組み込んだ、データのリアルタイムでの取得のためのシステム構築を行い、ReactIR(総括班の予算で購入)を中核としたフローシステムを作製できたため。今後の課題としては、触媒を担持した固体相を充填したカートリッジ型の反応モジュールの作製と各種反応への適用があげられる。
これまでに行った、トリメチルシリルシアニドとカルボニル化合物の反応における機械学習を用いた反応条件最適化法を参考に、現在当研究室で開発中のアセトニトリルのカルボニル化合物への付加反応における反応最適化を試みる。この反応で、予備的実験により、通常のバッチ型電解反応と比較して、フロー型の電解セルを用いることにより、副反応(カルボニル化合物のアルドール反応による自己縮合など)が抑制されることがわかっている。機械学習を用いることで、最も収率のよい条件を短時間で見つける手法について検討する。また、最近、シリルアセチレンがカルボニル化合物に触媒量の電気量で付加することも見出した。次年度はこの反応にも取り組みたい。また、昨年度までに構築した、インライン分析をフロー系に組み込んだ、データのリアルタイムでの取得のためのシステムを有効に利用して、高効率でのデータ取得と機械学習への展開、それをもとにした反応系のブラシュアップなどにも取り組みたい。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
J. Org. Chem.
巻: 86 ページ: 16035-16044
10.1021/acs.joc.1c01242