研究領域 | デジタル化による高度精密有機合成の新展開 |
研究課題/領域番号 |
21H05217
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
滝澤 忍 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50324851)
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研究分担者 |
近藤 健 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (10816846)
笹井 宏明 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (90205831)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | 機械学習 / フロー合成 / 電解合成 / ベイズ最適化 / ガウス過程回帰 / 有機分子触媒 / 酸化 / 最少実験データ |
研究実績の概要 |
本申請研究題目「フロー・電解ドミノ反応開発を加速する機械学習の実装と応用」では、これまで情報科学分野でも研究例がほとんどなくフロー・電解合成分野では初となる『最少実験データ数と実験計画をハイブリッドした実践的機械学習』を基盤とする反応条件スクリーニング技術の革新を目指す。具体的には、これまで当研究グループの多機能触媒による精密有機合成反応開発で蓄積してきた反応支配因子データとA01, A02, A03班の精密有機合成知見データをフロー・電解合成の機械学習(ML: Machine Learning)の説明変数として活用し、高品質学習データによる最少実験データでの最適反応条件予測(可視化)と反応開発の加速化を試みる。フロー・電解合成の高品質な学習データと条件最適化アルゴリズムをデジタル有機合成DB(DataBase)に提供すると共に、バッチ合成(フラスコ等の反応容器を使用する従来法)からフロー合成への変換をサポートする。フロー・電解ドミノ反応用固定化触媒モジュール開発研究を展開し、実践的データ駆動型フロー・電解ドミノ合成法の開拓による省人化・生産性向上・直截的分子変換プロセスの確立を目指す。本年度は、ベイズ最適化を用いる最少試行回数によるケチミンの電解合成反応条件最適化、ガウス過程回帰活用によるフロー電解シアノ化反応の予測収率と予測生産性の可視化(計画班内共同研究)、および制約付きベイズ最適化による脱炭素志向アミノ酸フロー電解合成の反応条件最適化(計画班内共同研究)を検討し、結果、最少試行回数にて、それぞれの反応条件最適化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界で初めてとなる電解合成反応開発への機械学習(ベイズ最適化)実装研究では、12回の試行からアミンの酸化反応条件である5つのパラメータ(電流密度・基質濃度・電解質濃度・反応時間・反応温度)を最適化することに成功した。ガウス過程回帰活用によるフロー電解シアノ化反応の予測収率と予測生産性の可視化(計画班内共同研究)では、精度の高い推定モデルを構築することができた。制約付きベイズ最適化による脱炭素志向アミノ酸フロー電解合成の反応条件最適化(計画班内共同研究)では、10回の試行から、最少エネルギーにて非天然型アミノ酸を高収率かつ高効率にて合成することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
一般的に固定化触媒モジュールは、均一系触媒を市販ポリマーに固定化しカラム充填することで調製できる。しかしながら既存法では、有機反応溶媒によるポリマー膨潤で触媒サイトがポリマー内部に埋没し固定化触媒の活性は低下する。また金属触媒を固定化した場合、配位子からの遷移金属の解離による失活や、解離した遷移金属による生成物の汚染が問題となる。そこで反応基質活性化に金属を必要としない有機分子触媒を簡易合成ナノ粒子の表層に有する固定化有機分子触媒モジュールを開発することで本問題を解決する。触媒分子の自己組織化を利用する本固定化法は、触媒活性サイトがナノ粒子の表層に放射状に露出し埋没しないため高活性な不均一触媒が簡便に調製できる。 ベイズ最適化によるパラレルスクリーニングにおいて、化学者の目利きを基本とするイニシャルデータセット生成に、ランダムサンプリングよりもLatin Hypercube Sampling等のアルゴリズムを利用する方が構築した推定モデルの精度が良いことが明らかとなりつつある。今後は他のアルゴリズムも検討し、それらアルゴリズムで生成される点群の性質と点群から推定した応答局面の推定制度を精査していく。 これまでのベイズ最適化では連続パラメータの最適化を検討してきたものの、ミキサー装置のような離散パラメータの最適化は検討してこなかった、今後はカテゴリカルパラメータの最適化についても検討していく。
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