研究実績の概要 |
次の2つの研究について実績として報告する。 1)反応速度式グラフの機械学習による予測 有機合成反応の結果データを学習データとし、そのパフォーマンスを任意の基質に関して予測することは、非常に有用な手法として注目されている。しかし、有機合成反応の結果データを学習データとし、そのパフォーマンスを任意の基質に関して予測することは、非常に有用な手法として注目されている。その際、パフォーマンスとしては、反応収率もしくはジアステレオ選択性・エナンチオ選択性が選ばれることが多い。実際のプロセス指向の反応評価には、反応速度の見積もりが重要である。すなわち、どれだけの時間で何%の収率を最大値として得られるのかということが明らかになることが望ましい。このような値に関する機械学習はこれまでなかった。そこで、反応曲線そのものを予測するという新しい試みを研究した。具体的には、アルデヒドメチレン化反応を対象とし、40種の基質に対して0,5,10,15,30,60分後の収率を測定して学習データを作成した。この点に対して共通する関数曲線を仮定した上でcurve fitを行い、関数曲線の係数値と、基質の分子記述子を機械学習用データとした。回帰分析により得られた反応速度曲線予測は、任意のアルデヒドに対してよい結果を与えた。この結果により、最大到達収率とその時間依存性を予測することが可能になった。このことは、反応をフロー法で行う際にも容易に条件設定を行えることを意味する。 2)キュバンを始点とするカゴ型化合物の網羅的合成 キュバンは医薬品に応用される興味深い炭化水素骨格であるが、この分子を原料としてクネアン、セミブルバレンなどの異性体を選択的に合成する手法を開発した。この手法は、当該分子の化合物空間を構築することを意味し、そのネットワーク型データベースの作成を行なっている。
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