研究領域 | 生物を陵駕する無細胞分子システムのボトムアップ構築学 |
研究課題/領域番号 |
21H05230
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
油谷 幸代 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究部門付 (10361627)
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研究分担者 |
白井 智量 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (00639586)
本田 孝祐 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 教授 (90403162)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | ノネナール / ATP生産システム / 最適化モデル / 酵素反応 |
研究実績の概要 |
1.加齢臭の原因となるノネナール検出システムの開発 ノネナールは、脂肪酸の一つであるパルミトオレイン酸が分解されることで発生する臭気成分であり、ヘルスケア分野での実用化のためにも簡易的検出システムの開発が期待されている。そこで、酵素の有する優れた基質特異性に着目し、ノネナールに対する高い特異性を有した酵素を創出・利用することで当該物質を高感度に検出可能なシステム構築にむけた基盤技術を開発する。2022年度は、ノネナールを基質として最も認識し易い酵素反応を触媒しる酵素反応パターンを選出した。また、天然に存在する酵素を用いて評価系を構築することに成功し、長期間いかに酵素が安定した性能を発揮できるかという部分が今後の開発に向けたボトルネックであることを抽出した。 2.解糖系を超えるATP合成能を有する分子システムの構築 本研究では、天然における代表的なATP生産システムのひとつである解糖系に着想を得た人工代謝経路を無細胞環境下で構築し、天然を超えるATP供給システムとしてこれを利用する。2022年度は、昨年度構築した人工解糖経路(Non-oxidative glycolysis, NOG)について、経路を構成する酵素の最適量バランスの決定を試みた。本田Gにて取得した当該経路を構成する酵素の投入量とATP生産速度のデータを油谷グループに提供し、両者の関係性を表すモデルを構築した。この結果、構成酵素群のうちATP生産速度に特に顕著な影響を及ぼす酵素を決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画で記載した通り、「1.加齢臭の原因となるノネナール検出システムの開発」については、白井が開発した人工代謝反応の設計ツールであるBioProVと化合物構造特徴量抽出技術を融合し、ノネナールを基質として最も認識し易い酵素反応を触媒する酵素反応パターンを選出した。酵素反応経路を設計する上でのボトルネック抽出としては、天然に存在する酵素を用いて評価系を構築することに成功し、長期間いかに酵素が安定した性能を発揮できるかという部分が今後の開発に向けたボトルネックであることを抽出した。 「2.解糖系を超えるATP合成能を有する分子システムの構築」は、天然における代表的なATP生産システムのひとつである解糖系に着想を得た人工代謝経路を無細胞環境下で構築し、天然を超えるATP供給システムとしてこれを利用することを目標としている。実施計画書に記載した通り、2022年度は、本田が昨年度構築した人工解糖経路について、経路を構成する酵素の最適量バランスの決定を試みた。本田Gにて取得した当該経路を構成する酵素の投入量とATP生産速度のデータを油谷グループに提供し、両者の関係性を表すモデルを構築した。この結果、構成酵素群のうちATP生産速度に特に顕著な影響を及ぼす酵素を決定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.加齢臭の原因となるノネナール検出システムの開発 酵母由来のアルコールデヒドロゲナーゼ(YADH-I)をベースとし、ドッキングシミュレーションおよび機械学習を用いたアプローチにより、ノネナールに対する基質親和性の向上および長期保存に耐える安定性付与を目指す。また、計画班のE01班(ナノ工学)と連携し、安定的に担持されるための酵素開発を行い、出口を見据えた上で安定的に使用できるデバイスの開発を目指す。 2.解糖系を超えるATP合成能を有する分子システムの構築 NOGを用いた予備検討で複数の酵素からなるカスケード反応のモデル化と最適化手法の確立に一定の目途が立ったことから、より多数の酵素からなる実用性の高いカスケード反応へとこれを展開する。具体的にはNOG(酵素数12)にさらに複数の酵素を組み込み、診断薬補助剤などとしてニーズの高いATP、NADなどの補酵素類や、種々の配糖体の合成に必要なUDP-グルコースの連続的供給システムへと発展させる
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