研究領域 | 2.5次元物質科学:社会変革に向けた物質科学のパラダイムシフト |
研究課題/領域番号 |
21H05233
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岡田 晋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70302388)
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研究分担者 |
櫻井 英博 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00262147)
吾郷 浩樹 九州大学, グローバルイノベーションセンター, 教授 (10356355)
渡邊 賢司 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (20343840)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | 2.5次元物質 / 原子層物質 / 有機合成 / 化学気相成長 / 計算物質科学 |
研究実績の概要 |
岡田は、新しい共有結合ネットワーク物質として、スピロ化合物を構成単位とした2次元物質の物質設計をおこなった。さらに、新しい2.5次元物質の候補として、2層グラゲンの層間にお椀状分子が挿入された層間化合物の物質設計と物性解明をおこなった。当該系は、全炭素原子から構築される系にもかかわらず、お椀状分子の配向に依存してグラフェンの各層にp/nのボーダーが構築されることを予言した。また、領域内の実験グループの理論計算ならびに解析のサポートをおこなった。特に、2層ヘテロ原子層系において、モアレが生み出す長周期ポテンシャルによる電子構造の変調の解明、WTeワイヤ凝集系の電子物性の解明をおこなった。 吾郷は、代表的な2.5次元物質である二層グラフェンのCVD成長と層間の二次元ナノ空間へのインターカレーションに関する研究を行った。特に、機械学習を用いて二層グラフェンの積層構造の新奇解析法を開発するとともに、積層構造に依存したインターカレーションの変化を見出すことにも成功した。 櫻井は、お椀型共役系小分子であるスマネンの、インターカレーション分子としての機能開拓に関連して、ジフルオロスマネン結晶中で、お椀のin-plane方向での回転挙動に伴う誘電応答が起こることを明らかにした。 渡邊は、炭素不純物欠陥を拡散法により導入し高純度試料にしばしば見られる典型的な発光スペクトルと比較した。その結果2.0, 1.5 eVなどの発光バンドを観測したが、これらは高純度試料に見られる欠陥発光スペクトルとは異なることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論面での物質設計においては、複数のユニークかつ実現可能性が高い物質の提案を複数行った。また、新奇な電子物性を有する2.5次元物質の提案、さらに実験グループの理論解析サポートも複数行った。 物質合成では、新しい2.5次元物質の合成をおこなった。また、高品質な種々の原子層物質の提供もA02~A05班への提供をおこなっている。また、二層グラフェンの積層構造の解析法の提示をおこなっている。さらに、分子系として、お椀状分子の2.5次元系への応用に向けた基礎的知見の確立も行われつつある。さらに、hBNについても、領域内のみならず世界に対して安定した供給がなされた。 以上の点からこれまでの研究は計画に沿って順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
岡田は、2.5次元物質を構成要素となる新しい2次元物質の物質設計と物性解明をおこなう。また、あたらしい2.5次元物質の物質設計も行う。さらに、領域内の実験グループと引き続き共同研究を行い、実験の理論解析のサポートを行う。 吾郷は、グラフェンの研究に加え、六方晶窒化ホウ素のCVD成長を継続するとともに、2.5次元物質のビルディングブロックとなる各種二次元材料を領域内に提供して、領域研究の活性化に貢献する。また二次元ナノ空間内での分子構造と物性に関する探索研究をさらに展開していく。 櫻井は、お椀型共役系小分子であるスマネン誘導体のインターカレーション分子としての機能開拓を継続して行う。具体的には、顕微ラマンによって追跡が可能なスマネン誘導体のデザイン及びその合成とインターカレーションの試み、スマネンと2次元物質を共有結合でつなげたものを合成して、その物性を測定する。また、非平面性2次元物質の合成にも取り組む。 渡邊は、hBN気相成長による成長試料の高純度化を図るために、ガス供給系統および成長室を従来のものと交換し成長環境を整える。前年度の拡散法による高濃度炭素不純物の発光バンドの結果をもとに希薄密度における不純物欠陥の構造の解明を試みる。
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