研究領域 | 2.5次元物質科学:社会変革に向けた物質科学のパラダイムシフト |
研究課題/領域番号 |
21H05236
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
越野 幹人 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60361797)
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研究分担者 |
高村 由起子 (山田由起子) 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90344720)
笹川 崇男 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (30332597)
蒲 江 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00805765)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | 2.5次元物質 / 2次元物質 / グラフェン / 遷移金属カルコゲナイド |
研究実績の概要 |
今年度は2.5次元物質の物性探索に立ち上げとして、理論、実験の両面から精力的に研究を開始した。 (1) モアレ2.5次元物性理論の開拓:hBN/graphene/hBNのサンドイッチ構造におけるスペクトルのギャップのトポロジカル数を同定し、その結果を2,3次元準結晶全体に拡張し、トポロジカル数が高次元の量子ホール効果の量子数と関連付けられることを示した。またその他にはツイストに双グラフェンにおけるモアレエッジ状態の理論、二次元物質黒リン、青リンのエッジ状態とコーナー状態の理論研究を行った。 (2) Ga系2.5次元物質の物性開拓:セレン化ガリウム(GaSe)の準安定相の光学的性質を共同利用拠点・分析拠点(光)等において計測し、紫外光域で従来相との違いが明確に現れることを第一原理計算結果と合わせて明らかにした。また、第一原理計算でディラック・コーン様電子状態が予測されるゲルマニウム単結晶基板上GaSeハニカム格子の角度分解光電子分光による電子状態測定結果の解析が進み、GaSe由来の分散の同定に成功した。 (3)新規2次元物質材料の開発と物性探索:空間反転対称性の破れた超伝導物質PbTaSe2における巨大な非線形輸送現象、磁性二次元物質CuInP2S6における制御可能なシフト電流を発見した。 (4) 2.5次元物質において歪みによるモアレ制御技術の構築とその光学評価: 歪み印可した原子層ヘテロ構造の作製を行い、顕微分光測定及び観察により光学特性とモアレパターンの相関を評価した。これらを基に、歪みによる層間励起子の変調を示唆する結果が得られ、今後モアレパターンの制御による新たな機能性発光デバイスの創製が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的にはモアレ準周期系のトポロジカル物性の開拓に大きな進展があった。また実験的には、Ga系、強磁性体、超伝導体を含む新たな2.5次元物質の開拓、モアレ物質における光学特性の制御に至る幅広い進展があり、順調な立ち上がりとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2.5次元物質の基礎言語となる準周期物性理論の構築とともに、多様な物質材料の高品質な2.5次元物質の作成、および物性制御技 術の開発に取り組む。具体的な目標は以下の通りである。 (1) 2.5次元物質の物性理論の構築(越野):トポロジカル絶縁体、NbSe2などの2次元超伝導体からなるツイスト系の理論物性探索に取り組む。また準周期ツイスト系における準結晶基礎理論の確立を目指し、特に線形応答による物性計算、磁場中ランダウ準位の計算法を開発する。またツイスト系でのモアレフォノンの計算、熱電効果、トポロジカル・フォノンの探究を行う。 (2) 3次元物質+2次元物質=2.5次元物質の創製と新奇構造・物性開拓(高村):。2022年度はイオン銃を用いて窒化ホウ素等の基板上 二次元物質を形成し、窒化ホウ素と基板の間のナノ空間を利用した準安定二次元物質の合成とその構造・物性解析を行う。 (3)3次元から迫る2.5次元物質の量子物性開拓(笹川):今年度は、2次元物質としては未確立なハーフメタルやワイル半金属、トポロジカル超伝導などを、+0.5次元 の効果で実現することを目指す。昨年度は素材の領域内共有により、テーラーメイドの2.5次元物質設計や体系的な量子物性解明に大きな進 展があったので、2022年度も共同研究に注力する。 (4) 2.5次元物質のモアレ制御による光学機能探索 (蒲) : 歪みによるモアレ構造はピエゾAFMにより直接観測・評価を行う。また、ヘテロ・モアレ発光デバイスにおいて顕微 発光分光を行うことで、モアレパターン変調が偏光発光特性に与える影響を解明する。これらの物性評価及びデバイス作製技術を基に、2.5次 元物質のモアレパターン制御による機能性量子光デバイス応用へ展開する。
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