研究実績の概要 |
本研究課題は、脊索動物の中で最も単純な神経系を持つホヤの幼生をモデルとして、シングルセルトランスクリプトーム(scRNA-seq)解析を駆使し、適応回路を担う神経細胞種をセンサスすることにより、適応回路の基本設計(回路発生・回路構築・回路機能)を解明することを目指した研究である。 本年度は回路発生と回路構築に関する研究を行った。 ホヤ幼生の表皮には外界からの刺激を感知する表皮感覚神経細胞が多数存在している。ホヤ幼生には頭部に5種類(PNs:Palp Neurons, PSCs: Palp Sensory Cells, RTENs: Rostral Trunk Epidermal Neurons, aATENs: anterior Apical Trunk Epidermal Neurons, pATENs:posterior Apical Trunk Epidermal Neurons)、尾部に2種類(BTNs: Bipolar Tail Neurons, CESNs: Caudal Epidermal Sensory Neurons)の合計7種類54個の表皮感覚神経細胞が存在することが知られている。 単一細胞トランスクリプトーム解析と実験発生生物学的な手法を組み合わせた研究の結果、BTNsの最終分化を制御する転写因子カクテルの同定に成功した。また、PNs, PSCsの分化を制御するシグナル分子群を明らかにした。 回路構築の研究として、単一細胞トランスクリプトーム解析のデータをもとに軸索の誘導因子・反発因子およびその受容体の発現を調べた。その結果、神経細胞間の相互作用マップを作成することに成功した。今後は軸索の誘導因子・反発因子およびその受容体の機能を阻害した胚における神経回路の構築を調べ、実際に神経回路構築に重要な分子の同定を行う。
|