研究領域 | 神経回路センサスに基づく適応機能の構築と遷移バイオメカニズム |
研究課題/領域番号 |
21H05244
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 和人 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90211903)
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研究分担者 |
松下 夏樹 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (40271556)
瀬戸川 将 獨協医科大学, 医学部, 助教 (30760508)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | 刺激弁別学習 / 線条体 / 遺伝子発現 / 神経活動 / 機能操作 |
研究実績の概要 |
動物はさまざまな環境変化に応答して自らの行動を変容させる。聴覚刺激に基づく弁別学習を獲得する際に、学習初期には前方の背外側線条体(aDLS)が、その後期には後方の腹側線条体(pVLS)の活動が亢進し、学習の進行に伴って機能回路が遷移する。学習獲得の過程で時期・領域特異的に発現する遺伝子を神経活動に基づくRNA-seq解析により特徴的な発現変動を示す遺伝子を同定し、それらの線条体内発現パターンや発現細胞種の構造的特性を解析するとともに、RNA干渉およびゲノム編集によるノックダウン技術を利用して遺伝子機能を解析する。また、学習の進行に重要な役割を果たす経路をウイルスベクターによる機能操作技術を用いて細胞レベルで解析する。聴覚弁別学習を獲得する過程で時期・領域特異的に発現変動する遺伝子を同定するために、ラットの異なる学習段階で、aDLSおよびpVLSを切り出し、そこからRNAを抽出し、RNAseq法を用いて遺伝子の発現プロファイルに関する解析を開始した。郷班と連携し、現在、解析を進めている。また、学習の進行に重要な役割を果たす経路を細胞レベルで明らかにするために、aDLSおよびpVLSの入出力経路を解剖学的に検討した。それぞれの領域に順行性および逆行性のトレーサーであるコレラトキシンBサブユニット(異なる蛍光色素が結合)を注入し、標識される脳領域を探索した。両者の入力あるいはそれらから出力する領域は相違し、それぞれは異なる神経回路ループを構成することが示唆された。さらに、aDLSとpVLSの活動促進の基盤となる神経活動の変化をとらえるために、多電極記録法を用いて活動の記録を行った。それぞれの領域に特徴的な神経活動を検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
聴覚弁別学習を獲得する過程で時期・領域特異的に発現変動する遺伝子の同定において、郷班と連携し、現在、解析を進めている。また、学習の進行に重要な役割を果たす経路を細胞レベルで明らかにするために、第一に、aDLSおよびpVLSの入出力経路を解剖学的に同定することができた。aDLSとpVLSの活動促進の基盤となる神経活動の変化をとらえるために、多電極記録法を用いて活動の記録を行い、それぞれの領域に特徴的な神経活動を検出することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
聴覚弁別学習を獲得する過程で時期・領域特異的に発現変動する遺伝子解析に関して、郷班との連携を進め、発現変動する遺伝子を探索する。必要に応じて、単一細胞RNAseq法を用いて、遺伝子発現プロファイルを解析し、線条体の細胞種ごとに発現変化する遺伝子群を同定する。また、学習の進行に重要な役割を果たす経路を細胞レベルで明らかにするために、第一に、aDLSおよびpVLSの入出力経路の解剖学的解析を進め、それぞれの領域に順行性および逆行性のトレーサーを注入し、標識される脳領域を同定する。順行性に標識される領域については、線条体にAAV1-Creベクターを注入し、神経終末からのベクターの輸送を介して、2次ニューロンにCreを発現させる。この領域にCre-loxP組み換え依存性にGFPを発現するベクターを注入し、2次ニューロンの投射先を解析する。第二に、経路の機能を解析するために、aDLSから投射する直接路と間接路の細胞を選択的に除去する、あるいは、それらの機能を抑制することによって弁別学習の獲得に与える影響を解析する。
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