研究領域 | 神経回路センサスに基づく適応機能の構築と遷移バイオメカニズム |
研究課題/領域番号 |
21H05246
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
島崎 秀昭 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (50587409)
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研究分担者 |
田中 琢真 滋賀大学, データサイエンス学系, 准教授 (40526224)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | 神経スパイクデータ解析 / 回路推定 / 高次相関 |
研究実績の概要 |
本研究は、刻々と変化する環境に効率的かつ柔軟に適応する生物の適応能力の情報論的な機構を遺伝子・回路レベルで明らかにすることを目的とし,そのために必要な神経細胞集団の時系列解析技術と適応学習の理論を一貫した数理モデルで構築することで,データに基づく統一的な適応理論を構築することを目標としている.これにより先鋭的な神経回路活動の計測・操作技術と網羅的な遺伝子発現の解析技術に基づいて,適応を担う基盤回路を解明するという学術的な問いに答える. 2年目にあたる本年度は状態空間イジングモデルの高速化に加えて,イジングモデルを用いて神経細胞集団活動の巨視的な状態を定量化する目標に向けて,非線形な神経活動ダイナミクスの時間非対称性を定量化可能な「エントロピー生成」を指標として取り上げ,理論的な解析を行った.さらに,神経スパイク活動データの高次相関構造から背後の局所神経回路網の構造や構成神経細胞の細胞種別を特定する手法についての研究・開発を行い,その成果を出版した(Shomali, Ahmadabadi, Rasuli, Shimazaki. Communications Biology, 2023).本研究では記録された神経細胞の活動データだけから,記録していない神経細胞からの入力の構造やタイプ(興奮・抑制)が判別できることを示し,サル・マウスの視覚野には興奮性の局所的な共通入力が存在することを示した.本論文は当該雑誌で注目論文としてトップページに掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経スパイク活動から回路網構造を特定する手法の開発が終了し,論文が出版された.
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今後の研究の推進方策 |
神経細胞集団が多様かつスパースな神経活動パターンを示すために必要な統計構造の条件を明らかにし、観測された神経細胞集団活動の特徴を捉えた新たな統計モデルを構築する.これをもとに,神経細胞集団活動を,外界の生成モデルを構築し推論を行なっているとする観点から解析するための統計・数理モデルの構築に着手する.
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