研究領域 | 新興硫黄生物学が拓く生命原理変革 |
研究課題/領域番号 |
21H05261
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中林 孝和 東北大学, 薬学研究科, 教授 (30311195)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
|
キーワード | 超硫黄分子 / 非線形ラマン / ラマン顕微鏡 / タンパク質 / 密度汎関数 |
研究実績の概要 |
(1) 分光器や検出器などの備品類を購入し、非線形ラマン散乱の一つであるCARS (Coherent anti-Stokes Raman Scattering) を用いた顕微鏡システムの立ち上げを行った。1秒以下の露光時間で高分子のC-H伸縮振動などに由来するCARSバンドの観測に成功した。次年度では、生細胞測定への拡張、またフィルター類を用いて350 cm-1までの低波数側の測定ができるように最適化する。(2) S-S伸縮振動バンド領域におけるシステインおよびグルタチオンの超硫黄分子のモデル化合物のラマンスペクトルが密度汎関数法を用いて再現し、量子化学計算によって構造解析が行えることを示した。得られた結果をもとに、顕微ラマン分光法を用いたタンパク質内に生成した超硫黄構造の検出を行った。リゾチームなどのタンパク質と硫化ナトリウムとの反応によって生じた超硫黄構造をS-S伸縮振動バンドの変化からその場検出した。現在、微量試料も測定できるように表面増強ラマン散乱(SERS)を用いた超硫黄構造の検出の検討を行っている。(3) ALS関連タンパク質SOD1はオリゴマー化することで毒性が増大することが提案されている。我々はS-S結合がSOD1の酸化毒性と関係することを示し、分子間のS-S結合を介して生成したオリゴマーが強い酸化毒性を生じることを示すことができた。オリゴマーの毒性の起源として酸化毒性を提案できる。また硫化ナトリウムをSOD1に作用させることで超硫黄化したSOD1の作成にも成功し、構造や酸化毒性との関係を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
約半年間の期間であったが、CARS顕微鏡の立ち上げを行うことができた。また量子化学計算を用いた超硫黄分子の構造解析を行い、タンパク質に生じた超硫黄構造の検出に拡張することができた。SOD1の酸化毒性にS-S結合が重要であることを示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) CARS顕微鏡の最適化を行うとともに、最大エントロピー法を用いた自発放出型のラマンスペクトルに変換するプログラムの作成を行う。細胞測定はホルマリンで固定化した細胞試料を初めに用い,細胞内の超硫黄分子検出を検討する。(2) 顕微ラマン分光法を用いたタンパク質内の超硫黄構造の検出について、様々なタンパク質に展開し、さらに、原子数まで明らかにできるのか密度汎関数法やモデル化合物を用いて検討する。金ナノ構造を有する基板を用いたSERS検出へと展開する。(3) SOD1の超硫黄化と抗酸化・酸化作用との関連を検討する。(4) 密度汎関数法を用いた超硫黄分子の構造計算を論文化し、超硫黄分子が関与する反応計算へと拡張する。
|