研究領域 | 新興硫黄生物学が拓く生命原理変革 |
研究課題/領域番号 |
21H05271
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
増田 真二 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30373369)
|
研究分担者 |
清水 隆之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90817214)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
|
キーワード | 硫化水素 / 活性硫黄分子種 / 大腸菌 / 細菌 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、いくつかの細菌種を用いて硫化水素応答時のセンサータンパク質の修飾状態と遺伝子発現変化を精査し、細胞内における硫化水素の認識とシグナル伝達のメカニズム、またその生理的重要性を解明することである。2021年度は以下の項目の研究を進めた。 1) “イオウ細菌”として我々がこれまで調べてきた紅色光合成細菌、また“非イオウ細菌”として大腸菌、を用いての嫌気環境下における実験系の構築を進めた。具体的には、嫌気チャンバーを新規に購入、設置・稼働させ、我々が先に同定した硫化水素応答性転写因子SqrRとそのホモログの精製を嫌気条件にて行うための条件を整えた。さらにタンパク質の修飾を調べるLC-MS/MSの解析条件検討も進めた。 2)これまでの研究で、紅色細菌のSqrRは試験管内において保存された2つのシステイン残基間に超硫黄分子種依存的に分子内テトラスルフィド結合を作ることでプロモータ領域への結合力を調節していることがわかっている。しかし細胞内でSqrRの修飾を行う超硫黄分子は明らかとなっていない。これまでに、硫化水素添加時の紅色細菌内における超硫黄分子種の存在量推移に関する網羅的定量データを、東北大学の赤池研究室の協力のもと取得ことができた。2021年度は得られたデータの解析を重点的に進めた。 3)大腸菌のSqrRホモログYgaVの大量発現と精製系の構築を進めた。また大腸菌変異株KEIOコレクションからYgaV変異体を入手し、その表現型を精査することで、YgaVの機能の生理的重要性を明らかにすることを目指した。その結果、ygaV変異体は抗生物質耐性弱まることを明らかした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍もあけ、計画通りに研究を進めることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を踏まえ、2022年度は以下の項目の研究を進める予定。 1)大腸菌のYgaVの生化学的解析:紅色光合成細菌の硫化水素依存型転写因子SqrRは活性硫黄分子種依存的に分子内テトラスフィド結合を形成することがわかっている。同様の修飾が大腸菌のSqrRホモログ(YgaV)でも起こるのかを、前年度にセットアップした嫌気チャンバーを利用して調べる。 2)紅色細菌の活性硫黄分子代謝とシグナリングの関係性:2021年度までに、硫化水素添加時の紅色細菌内における超硫黄分子種の存在量推移に関する網羅的定量データを東北大学の赤池研究室の協力のもと取得し、その解析を重点的に進めた。その解析結果を基にした論文の執筆を進める。また細胞内の活性硫黄分子種の組成変化を基にその代謝過程を予想する。予想された代謝酵素の変異体を作出し、活性硫黄分子種の代謝とそのシグナリングの関係性を調べる。 3)大腸菌のSqrRホモログYgaVの生理機能解析:前年度までに作出した大腸菌の硫化水素応答性転写因子YgaVの変異体を用いて、その生理的重要性を明らかにすることを目指す。これまでにygaV変異体は抗生物質耐性弱まることを明らかした。そこで、活性酸素種の定量などを通じて、YgaV依存の転写制御がどのような抗生物質にどのくらい寄与するのかを精査する。
|