研究領域 | 非ドメイン型バイオポリマーの生物学:生物の柔軟な機能獲得戦略 |
研究課題/領域番号 |
21H05275
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
甲斐 歳恵 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (40579786)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | 非ドメイン型タンパク質 / 非膜オルガネラ / ヌアージュ / piRNA |
研究実績の概要 |
フェーズI:Heroタンパク質については作成済みの10-20ライン程度のノックダウン株のストレス耐性や寿命の解析を引き続き行なっているが、致死、もしくは表現型を示さない変異体に二極化している。 フェーズIIでは、我々がこれまで同定したヌアージュの構造要素であるTudorファミリータンパク質の機能解析をさらに展開させている。Tdrd5(Tej)が、他のヌアージュタンパク質、Vasa、Tdrd9(SpnE)との相互作用により、核膜近傍でpiRNA前駆体のプロセシングに関わる研究成果をピアレビュージャーナルに投稿しており、現在、JCBでリバイズ中である。さらに、非膜オルガネラ・ヌアージュの構築の原理の解明を目指し、既知の構成因子と相互作用する新規タンパク質同定する目的で、近位依存性ビオチン化標識法の1つであるBioIDによって候補因子の網羅的解析をおこなっている。piRNAと結合するPIWIファミリータンパク質、Piwi, Aub, Ago3の解析によって同定された候補因子は既にスクリーニングがほぼ終了し、現在はいくつかの候補に絞って分子機能の解析を進めている。また、我々の解析対象の中核をなすTudorドメインタンパク質のTdrd5及びTdrd9も同様にBioIDによって相互作用する因子を同定するためのツールや予備実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェーズIについて、Dsup以外のクマムシタンパク質を発現するショウジョウバエ作成については、共同研究者の國枝氏と引き続き検討中。Heroタンパク質については、通常の研究室内至適温度の生育状況では、致死もしくは明らかな表現型を示すものが少なく、二極化しており、今後、共同研究者の泊氏と議論を重ねる必要がある。 フェーズII では、BioID法によって得られた、Aub、Ago3、Piwi の3つのタンパク質に相互作用するタンパク質の遺伝学的スクリーニングをほぼ完了し、ヌアージュ形成もしくはトランスポゾンの発現抑制に影響が出る因子を同定しつつある。既知のpiRNA因子と同程度にトランスポゾンの脱抑制を示すものは得られなかったが、マイルドな表現型を示すものが複数個得ることができ、ノックダウンやノックアウト株からの卵巣のトランスクリプトーム、ヌアージュ形成への影響について解析している。これらの成果については今年度中に投稿予定である。また、昨年度から開始した、Tudor ドメインタンパク質であるTdrd5及びTdrd9についても、既にユビキチン化タンパク質の調製を行っており、今年度前半には質量分析による候補因子を同定し、後半には遺伝学的スクリーニングを終了させる予定である。ユビキチンリガーゼとして機能する可能性があるヌアージュ因子Kumo(Tdrd4ホモログ)についてはS2細胞でユビキチン化活性を検出できたが、活性中心に変異を持つものなどのコントロール実験を行なっている。ユビキチン化の他にもNEDD化、SUMO化の可能性も検討するべく、HAタグプラスミドは既に構築済みである。
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今後の研究の推進方策 |
多くのヌアージュの構成因子が知られているが、それぞれがどのように相互作用し、巨大な非膜オルガネラを構築しているが、その分子機序は不明な点が多い。その解明を目指し、近位依存性ビオチン化とそれに続く質量分析法によって、新規因子の機能解析をさらに推し進める。また、非膜オルガネラであるヌアージュに局在しつつもまだその機能が明らかとなっていないSquやBoYbの解析についてもさらに押し進める。予備実験の段階であるが、得られたポリクローナル抗体がウェスタンや染色に使用できることを確認できたので、今年度は生化学的解析や、どのヌアージュ構成因子と物理的・遺伝的に相互作用するのか、解析を進める。さらに、ユビキチンリガーゼ活性を持つ可能性があるKumoについてha、in vitroでのユビキチン化活性の検証と、in vivoでの遺伝学的解析を用いて、その活性と非膜オルガネラ構造体の構築への影響を精査していく。また、細胞内構造体のさらなる理解を目的として、非膜オルガネラを持つことで知られる生殖細胞や神経細胞から難溶性RNAの探索を開始予定である。
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