計画研究
近年、全長にわたって天然変性領域から成り、一次配列への機能依存性が低い超天然変性タンパク質や、非翻訳領域と考えられていたRNA配列がコードする新規ORF由来のタンパク質など、従来のタンパク質の概念の枠組みを超えた遺伝子産物の存在が次々と明らかになってきている。タンパク質の一部又は全体が特定の立体構造を持たない天然変性タンパク質の存在は以前から知られていたが、立体構造の検証が困難なことから長年、他の分子との相互作用に関する綿密な議論が進まない状況が続いていた。しかしながら、NMR等を用いた詳細な解析により、転写制御を担う主要分子群であるCREBやp53の天然変性領域が重要な機能的役割を果たすことが報告され、細胞内でのタンパク質-タンパク質相互作用、あるいはタンパク質-RNA相互作用における、特定の構造を取りにくい「非ドメイン型」配列を介した分子間相互作用研究の重要性が急速に高まっている。非ドメイン型タンパク質・RNAと相互作用する因子群は、弱い分子間相互作用、あるいは結合・解離が速い動的相互作用によって機能している場合、従来の免疫沈降法をベースとした質量分析法(AP-MS法)では相互作用分子群を包括的に検出することが困難であると考えられる。本年度は、従来行われているAP-MS法に加え、近位依存性ビオチン標識法(BioID法)をはじめとする近接分子群のラベル化に基づく質量分析同定技術を領域内の各研究課題に幅広く提供し、非ドメイン型タンパク質・RNAに関する相互作用データを高深度・高精度に取得する解析パイプラインを構築した。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題においては、従来行われているAP-MS法に加え、近位依存性ビオチン標識法(BioID法)をはじめとする近接分子群のラベル化に基づく質量分析同定技術を初年度から領域内の各研究課題に積極的に提供し、当該技術開発に関する情報を領域内で共有・蓄積するプラットフォームを構築した。
当研究領域で見出されたHeroタンパク質やクマムシ特異的タンパク質などの非ドメイン型タンパク質、あるいはarcRNAに代表される非ドメイン型RNAに関して、超高感度質量分析技術を駆使することにより包括的に分子修飾を同定すると共に、被修飾部位ごとの機能的役割について精密な動態分析を行い、非ドメイン型バイオポリマー特有の分子制御に資する分子修飾機構を、修飾部位レベルの解像度で精密に議論することが可能な解析プラットフォームを確立する。
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J Virol
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月刊「細胞」
巻: 53 ページ: 880-883