計画研究
細胞競合は細胞間の相互作用を介した細胞排除現象であり、多細胞生命システムが自身の構造や機能を最適化する「自律性」を生み出す要の一つであると考えられる。細胞競合のプロセスを完全に理解するには、細胞集団内の細胞間にわずかな性質の差を細胞間の時空間的な相互作用と遺伝子発現・シグナル変化を単一細胞レベルで定量的に解析する必要がある。そこで本研究では、これまでに開発した独自の空間オミクス解析技術を基盤として、細胞競合における細胞間相互作用を計測するための新たな空間マルチオミクス技術の開発と独自空間オミクス技術を駆使し、本領域内の細胞競合の分子基盤と多細胞生命システムの自律性生成原理の理解を目指している。本年度は、本領域で対象となる組織や細胞の形態や状態の違いに適した空間トランスクリプトーム解析のプロトコル改変を進めた。また、空間エピゲノム解析の開発では細胞を単離することなく、組織中のエピゲノム状態を解析する技術が必要となる。そこで、研究代表者らが開発したエピゲノム解析技術ChIL-seqを組織切片で行うプロトコルの開発を進めた。マウス由来の組織切片に対してRNA polymeraseIIやH3K27acに対する抗体を用いたChIL-seqを行った。その結果、これらのシグナルと連続切片から獲得したRNA-seqの遺伝子発現情報が相関していることが確認できた。さらに、RNA polymeraseIIのリン酸化状態から組織中の細胞の遺伝子発現動態を推定することも可能となった。これらの知見は、細胞競合における細胞間の状態変化を評価する手法として応用できると考えている。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定に沿って、データ取得を進めており当初の計画通りに進展している。
研究計画に従って進めていく。
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
PLoS One.
巻: 17 ページ: e0265008
10.1371/journal.pone.
Curr Opin Struct Biol.
巻: - ページ: -
10.1016/j.sbi.
Mol Syst Biol.
巻: 17 ページ: e10323
10.15252/msb.
https://tx.bioreg.kyushu-u.ac.jp/