研究領域 | ジオラマ環境で覚醒する原生知能を定式化する細胞行動力学 |
研究課題/領域番号 |
21H05307
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
篠原 恭介 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20527387)
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研究分担者 |
武田 洋平 帯広畜産大学, グローバルアグロメディシン研究センター, 助教 (30804447)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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キーワード | 気道 / 繊毛細胞 / 環境応答 / 新型コロナウイルス |
研究実績の概要 |
気道繊毛細胞の環境応答のメカニズムの解明を引き続き実施した。新型コロナウイルスと気道繊毛細胞の相互作用の解明の課題では、前年度に引き続きウイルスの感染が成立するヒト化マウスの作製を実施した。年度内に遺伝子改変マウスの交配と繁殖により、新型コロナウイルスに対し感染が成立しかつ気道繊毛運動の運動パターンが異常となるマウス2種の準備が完了した(具体的にはhACE2-Tgを持ちかつRsph4a遺伝子またはLrrc6遺伝子を欠損したマウス)。また、気道繊毛細胞が自身の繊毛運動が引き起こす力学的負荷から細胞内部構造を保護する原理を明らかにする課題では、新規のアクチン束化蛋白質をコードする遺伝子がこの役割を担う事を見い出した。この遺伝子の欠損マウスでは細胞内部表層のアクチン繊維の特徴的な構造が時間とともに壊れていくのに対し、気道繊毛運動が停止する変異を加えるとこのアクチン構造の崩壊が観察されなくなる事を経時観察により見い出した。この現象は繊毛運動を高粘性により物理的に停止させるメチルセルロースの培養液の添加処理においても再現された。さらにレーザーアブレーションにより細胞内部表層のアクチン構造を破壊した際に、野生型マウス気道繊毛細胞ではアクチン構造が再生するのに対し遺伝子欠損マウスでは再生しなかった。この事から気道繊毛細胞では自身が引き起こす力学的負荷から細胞内部構造を保護するしくみがある事が示唆された。また、気道繊毛細胞外部表層のイオン環境を維持する原理の解明の課題では、個体における機能が未解析の細胞骨格結合蛋白質をコードする遺伝子が気道繊毛細胞表層のイオンチャネルの膜局在を制御する事を見出した。この遺伝子の欠損マウスではイオンチャネルの膜局在が失われる事および細胞表層のASL (Airway Surface Liquid)の厚さが有意に減少する事を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスと気道繊毛細胞の相互作用を明らかにする課題では、計画通り外部研究機関からの遺伝子改変マウスの導入と代表者が所属する研究機関におけるマウスの繁殖を進める事ができた。また、細胞内部構造環境と細胞外部のイオン環境を維持する原理を解明する課題においては、研究成果をまとめる上で鍵となる実験データを得る事ができプロジェクト全体の方針が固まった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスと気道繊毛細胞の相互作用を明らかにする課題では、ウイルスの受容体であるヒト由来のACE2遺伝子を発現するマウス(hACE2-Tgマウス)と発現しない野生型マウスを用いてex vivoおよびin vivoの系によりウイルスを感染させる実験を実施する。これによりヒト化マウスにおいて有意にウイルスの増殖速度と病原性が高い事を確認する。次に2022年度に準備した気道繊毛の運動パターンが異常となるマウスにウイルスを感染させる実験を実施する。ウイルスの増殖・細胞内構造・血中酸素濃度・臓器炎症等の観点からウイルスと気道繊毛細胞の相互作用を明らかにする。また、細胞内部構造を保護する原理の解明の課題では、2022年度に得られた予備データから得られる可能性のある結論を強くするためマウスの例数を増やす。統計的に有意な差が結論できる段階まで例数を増やしモデルを確立する。細胞外部のイオン環境を維持する原理を解明する課題においては、より仮説モデルの妥当性を検証するため異なる角度の実験(電気生理学および蛍光プローブによる気道組織外部表層のイオンの量の変化を計測する実験)を実施する。
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