研究実績の概要 |
本年度は研究の立ち上げを行い、大型計算機を入札により導入した。主要な研究実績は以下の通りである。 1.クラミドモナスが流れに逆らって泳ぐ性質(走流性)を示すことを発見した。実験と理論、数値シミュレーションを融合し、そのメカニズムが遊泳の非定常性からくることを明らかにした(Omori, et al., J. Fluid Mech. 2021)。 2.さまざまな遊泳モードを持つ微生物の2体干渉の解析を行い、干渉運動の相図を作成した。これにより、微生物干渉の体系的な理解が進んだ(Darveniza, et al., Phys. Rev. Fluids,2022)。 3.数値解析手法の高度化にも取り組み、汎用性の高い境界要素法と近接場が得意な潤滑理論を融合させたLT-BEMを開発した。この手法を用いることで、微生物運動の解析精度が大幅に改善することを示した(Ishikawa, J. Comp. Phys., 2022)。 4.開発した微生物行動シミュレータをバイオフィルムの形成過程へと展開した。複雑流路内に形成されるストリーマーの形成過程を、細胞スケールからメゾスケールで計算した。そして、マクロなレオロジー特性とストリーマー形状の関係を解明した(Kitamura, et al., J. R. Soc. Interface, 2021)。 5.開発した微生物行動シミュレータを酵母の発酵過程へと展開し、培養時の輸送現象を定量的に調べた。培養容器内にプラスチックごみを模擬した物体を混入させると、ブラジルナッツ効果が現れることを発見した。この成果はSoft Matter誌の背表紙を飾り、プレスリリースされた(Srivastava, et al., Soft Matter, 2021)。
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