申請者らは関節リウマチ(以下RA)におけるテーラーメイド医療の確立を目指すため、大規模な症例の集積が可能となるよう東京女子医大及び理化学研究所とGARNET (Genetics and Allied Research on rheumatic diseases NETworking)コンソーシアムを締結した。RA検体は10000例に達し、世界的に見てもトップクラスである。GARNETで協同し、RAの新規疾患感受性遺伝子や自己抗体の有無で分けたRA群間で遺伝的背景の違いを明らかにした(研究実績 雑誌論文参照)。TNF-αやIL-6に対する抗体製剤への反応性を規定する遺伝因子を全ゲノム関連解析によって明らかにするため、それら抗体製剤を使用され、反応性のデータが得られた症例のDNA検体を蓄積した結果、TNF-α抗体製剤135例、IL-6抗体製剤53名の合計のべ188例が得られた。その中で全ゲノム関連解析のデータのある検体に関し、反応性に対して行った解析では全ゲノム関連解析における有意水準に到達したものはなかった。GARNETおよび他の共同研究施設からさらなる症例の蓄積を行い、全ゲノム関連解析およびその結果確認を行う予定である。 申請者らによるゲノム解析によって発見された抗ミエリン塩基性蛋白(MBP)抗体の評価のため、抗MBP抗体が認識している抗原の解析を行った。その結果、RA血中に存在する抗MBP抗体は、組み換えMBPタンパクとの反応性は低く、シトルリン化組み換えMBPタンパクとの高い反応性が認められた。一方で、抗MBP抗体は既存の抗CCP抗体価と乖離を示す症例が少なくないことから、抗MBP抗体の意義は未だ不明といえる。そこで抗MBP抗体のRAの病態予測における有効性を評価するため、同一患者の時系列別の血漿検体を用い、抗MBP抗体を測定し、疾患活動性の変化との相関を調べた。その結果、RAの疾患活動性の指標であるDAS28と相関する可能性が示された。今後、より大規模な症例及び診断前の症例での検討を行い、抗MBP抗体のRAの予知、診断、病態予測における有用性を検討する予定である。
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