研究領域 | 免疫系自己-形成・識別とその異常 |
研究課題/領域番号 |
22021023
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 文彦 京都大学, 医学研究科, 教授 (50212220)
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キーワード | 関節リウマチ / 生物学的製剤 / 一塩基多型 / ゲノムワイド関連解析 / 薬剤感受性遺伝子 |
研究概要 |
申請者らは関節リウマチ(以下RA)におけるテーラーメイド医療の確立のため、理化学研究所、東京女子医大との間で共同研究コンソーシアムGARNET(Genetics and Allied Research on rheulnatic diseases NET working)を発足させ、RA患者10,000例のDNAを集積した。GARNETでの共同研究により、RAの新規疾患感受性遺伝子を9つ同定した(研究実績参照)。さらに、TNF-αやIL-6などのサイトカインを分子標的にした生物学的製剤の反応性についての研究と、申請者らによるゲノム解析によって発見された抗ミエリン塩基性蛋白(MBP)抗体の疾患における意義の解明を試みた。 生物学的製剤の反応性と遺伝子との関連を評価するため、抗TNF-α製剤を使用した患者135例と抗IL-6受容体抗体製剤を使用した患者299例の検体を、臨床情報とともに収集した。申請者はまず、我が国で開発・商品化された抗IL-6受容体抗体に注力した。ゲノム上のタンパクをコードするエクソン領域の一塩基多型(SNP)を網羅的にタイピング可能なアレイを用い、120例をタイピングし、ヨーロッパリウマチ学会の分類に用いられる活動性指標を個々人でスコア化した各SNPの回帰分析をおこなった。その結果、35領域の41個のSNPが有意水準に達していた。それらのアレル頻度はほとんどが5%以下であり、結果の解釈は慎重になされる必要があるため、現在、症例数を増やして同一のアレイを用いた解析を行ない、再現性を検証中である。 抗MBP抗体の病原性評価のため、コラーゲン誘発性関節炎モデルマウスに、タイプIIコラーゲンの代わりにMBPあるいは抗MBP抗体を尾部より静脈注射した。8例中1例の関節が腫脹したが、その後の再検では関節炎誘発効果は暁らかでなかった。早期RA27例を用いたヒトでの検討では、抗MBP抗体の上昇は認めたが、強い上昇はなく、早期発見の有用性は示されなかった。ドイツ人健常人200例、RA293名、SLE98名、他の膠原病187名を用いた検討では、健常人と他の膠原病に比しRAでの抗MBP抗体上昇は認めたものの、SLEと同レベルであった。また、ドイツ人血清の反応が弱く、人種間における抗体産生に違いがある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物学的製剤を使用され、詳細な臨床情報を伴ったRA患者のDNAを299例集積した。120例につき、ゲノムスキャンを完了し、反応性と関連する候補領域を同定した。また、抗MBP抗体の人種を超えた有用性を検討するため、ドイツ人検体778例の検体を集積・解析を行い、健常人や他の膠原病と比してRAとSLEにおける抗体価の上昇を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
生物製剤反応性については、残りの検体での検討を早期に終了し、関連を確認する。関連が確定すれば、関連領域のRAにおける役割を調べる。多型による発現の変化やタンパクの変化がないかを詳細な多型地図を用いて解析し、検討する。場合によっては、エクソン領域だけでなく、全ゲノムにわたって稠密にSNPを配置したアレイでの検討も考える。関連が未確定であれば、海外の研究期間との連携も考慮に入れ、さらなる症例の集積に努める。抗MBP抗体については、京都大学にて早期RA患者の血清を引き続き集積し、早期RAの診断においての有用性に関する結論を早期にだす。否定的であれば、病勢のモニタリングとしての有用性を検討する。
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