研究領域 | ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究 |
研究課題/領域番号 |
22101004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 健一 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (30150056)
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研究分担者 |
木村 亮介 琉球大学, 亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構, 特命准教授 (00453712)
川崎 廣吉 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (10150799)
若野 友一郎 明治大学, 先端数理科学研究科, 准教授 (10376551)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 学習戦略進化 / 文化進化速度 / ゲノム多様性データ / 学習仮説 |
研究実績の概要 |
(1)代表者・青木と分担者・若野は、海外共同研究者・Lehmann と共同で、学習スケジュール(個体学習と社会学習の発達段階に依存した使い分け)モデルを研究し、論文1報が受理された。本論文では前年度に報告した学習スケジュールに関する研究を拡張し、学習に費やする時間のみならず、学習された技術を用いて資源を獲得する時間をも考慮にいれた本格的な生活史モデルを検討した。(2)代表者・青木は、研究協力者・小林と共同で、連続的に変異する文化要素(例えば石器の長さ)の進化速度に関する理論的研究を行い、論文1報が受理された。近年、文化進化速度の決定要因として人口の効果が強調されているが、本論文ではイノヴェーション能力の方が重要であることを厳密に示し、(領域の作業仮説である)学習仮説を支持する結果を得た。(3)分担者・若野は、海外共同研究者・Lehmann と共同で、試行錯誤と創造性を数理モデル上で区別することに成功、それぞれの個体学習を駆使した場合に到達できる技術レベルを研究し、論文1報が受理された。(4)分担者・若野は、研究協力者・小林と共同で、集団構造がある場合の学習進化モデルを研究し、論文1本が受理された。(5)分担者・木村は、自然淘汰の対象となる男系(男から男へ伝達される)技術が、Y染色体のゲノム多様性に反映されることを示し、因果関係を議論した。(6)総括班主催の国際シンポジウムで、代表者・青木と分担者・若野は口頭発表を、分担者・川崎と分担者・木村はポスター発表を行った。また、代表者・青木は、スウェーデン国および韓国での国際会議において招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究業績の概要に見られるように、学習能力の色々な側面に関する理論的研究が進展しており、論文(すべて査読有りの国際誌掲載)や招待講演で公表されている。一方、旧人と新人の学習能力差の生得的な基礎、および学習能力差が交替劇に如何に寄与したかという、より本質的な問題については、残念ながら十分な結果が出ていない。残り2年間の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力者・小林が、学習能力差による交替劇の予備的なシミュレーションモデルを提案し、総括班主催の国際シンポジウムでポスター発表した。25年度以降は、これを叩き台にして、メンバーが一丸となってさらに精緻かつ妥当性の高いシミュレーションモデルの開発・研究に従事する。また、分担者・木村による新人のデモグラフィーの再構築を進展させるため、24度末に研究協力者・山口今日子を新たに雇用したが、25年度には研究協力者・中橋渉を配置換えし、この研究に当たらせる。
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