化石頭蓋は、化石化の過程で土圧などにより分断・変形され、破片の状態で発見される。従来こうした破片を接合し復元する作業は、古人類学者の経験と知識を頼りに手作業で行われてきた。しかし、脳の形態差に基づいて旧人・新人の学習能力差を検証するためには、3次元モデリング技術に基づいて化石破片を復元する手法を開発し、高精度かつ客観的な形態復元を実現する必要がある。 本年はその第一段階として、頭蓋破片の3次元形状情報に基づく化石破片の組み立てシステムの開発を開始した。まず、頭蓋破片の表面形状をベジェ曲面でモデル化することで隣接する破片の表面形状を予測し、それに基づいて隣接破片の組み立てを行う手法の開発を行った。本手法をAmud1号頭蓋化石の再組み立てに応用した結果、手法の限界はあるものの、工学的手法の援用による高精度かつ客観的な化石頭蓋復元の可能性が示された。 また構造解析を用いて、化石頭蓋骨のCT画像から頭蓋破片を再分離する手法の開発を行った。これは、物体(連続体)に力が作用するとき、形状が不連続な部位に大きな応力が発生することに着目して領域分割を試みるものである。Amud1号の頭蓋破片の再分離に応用した結果、その有効性が確認された。 さらに、頭蓋冠の形態変異を詳細に分析するために、頭蓋冠全体にランドマークを配置する手法を開発した。具体的には、形態的特徴点間を結ぶ最短軌道を求め、その等分点を特徴点と定義することで、頭蓋全体に特徴点を配置することを可能とした。本手法を用いて現代日本人頭蓋骨形態の性差の抽出を試みた結果、全変動に占める割合は小さいものの性差を検出することができた。本手法を応用して、現代人の頭蓋骨の形態変異を表現したデータベースを構築する予定である。
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