研究領域 | ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究 |
研究課題/領域番号 |
22101006
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
荻原 直道 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70324605)
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研究分担者 |
鈴木 宏正 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40187761)
近藤 修 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40244347)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 仮想復元 / 形状モデリング / 化石脳 / ネアンデルタール / 進化 |
研究概要 |
本年は、ネアンデルタール頭蓋骨Amud 1号、Gibraltar 1号、La Chapelle-aux-Saints 1号の3つの化石頭蓋骨の工学的復元を試みた。Amud1号は、CT画像から頭蓋破片の再分離を行い、各破片の3次元形状モデルを構築した。そして、各破片の表面形状をベジェ曲面でモデル化することで隣接する破片の表面形状を予測し、最適化計算に基づいて隣接破片を数理的に組み上げた。ただし、Amud 1号の頭蓋底や等外内腔は大きく欠損・破損している。そこで、これら部位の遺存状況の良いGibraltar 1号とLa Chapelle-aux-Saints 1号を、薄板スプライン関数を用いて変形させ補間した。Gibraltar 1号は、頭頂部に大きな欠損がある。このため上述の方法を用いてLa Chapelle-aux-Saints 1号を変形させ補間した。La Chapelle-aux-Saints 1号は基本的には遺存状態が良好ではあるが、頭蓋底の復元にGibraltar 1号を変形させた。これら再組み立て結果に対して、同じ手法を用いて現代日本人の頭蓋骨を変形させ、各化石頭蓋骨の復元を完成させた。 また、現代ヨーロッパ人頭蓋骨CTデータを頭蓋形状データベースに追加し、現代日本人・ヨーロッパ人エンドキャストの形態変異を、幾何学的形態測定学を用いて解析した。具体的には解剖学的特徴点と等分点を結ぶ最短経路を求め、その等分点を準標識点と定義することで、エンドキャストのような形態的特徴点が乏しい部位にも特徴点を配置した。このように配置した計171の特徴点座標に基づいて、現代人エンドキャスト形状の変異傾向を抽出した。 C02班と共同で、化石脳の形態を頭蓋骨から復元する数理的手法を確立した。具体的には、現代人の頭蓋骨形態から復元した化石頭蓋骨形態への空間変形関数を、3次元離散コサイン関数を基底関数とした非線形写像を用いて記述した。それを現代人脳形態に当てはめ同様の変換を行うことで、化石頭蓋骨に収まる脳形態を推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度となる本年までに化石頭蓋とその脳鋳型を復元する上で必要となる手法を開発し、具体的に旧人(ネアンデルタール)、および新人(中期旧石器時代ホモサピエンス)の頭蓋骨化石の復元が進んでいるから。またその中に収まっていたはずの脳(化石脳)の復元を行う方法論も確立し、旧人と新人の脳形態差を議論できる土台ができつつあるから。
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今後の研究の推進方策 |
化石頭蓋骨の最終復元結果を完成させる。また復元頭蓋骨に基づいて化石脳の推定を行い、両者の脳の形態差から旧人・新人の学習能力差を比較解剖学的に検証する。
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