研究領域 | バルクナノメタル ー常識を覆す新しい構造材料の科学 |
研究課題/領域番号 |
22102003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
尾方 成信 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20273584)
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研究分担者 |
香山 正憲 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (60344157)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バルクナノメタル / 第一原理計算 / 基礎物性設計 / 粒界 / 欠陥 |
研究実績の概要 |
バルクナノメタル(Cu結晶)の高温でのクリープ変形挙動の分子動力学法による解析を実施し、特に高温では活性化エンタルピーが一定でなくなり、活性化エントロピーも急激に増大することを明らかにした。また、活性化エンタルピーと活性化エントロピーの関係が線形の関係にあるMeyer-Neldelの経験則が成立していることを確かめた。この知見により、クリープ変形挙動を表現する構成方程式のさらなる高精度化を達成した。また、バルクナノメタル(Cu結晶)の粒界における弾性定数を分子動力学計算によって算出し、その局所弾性定数がCu完全結晶の平均的な弾性定数の約30%であることを明らかにした。これにより粒内での転位挙動を力学的に理解するための知見を獲得した。合金系のバルクナノメタルへ解析を展開するための手始めとして、Ni3Alナノワイヤーの引張り解析を分子動力学法を用いて実施した。その結果、ナノワイヤーの直径によって、相変態から双晶に塑性変形の素過程が変化するなど、変形形態にサイズ依存性があることを明らかにし、合金のバルクナノメタルの変形のサイズ依存性を理解する上で重要な基礎的知見を獲得した。開発を進めている第一原理電子状態計算に基づく局所応力・局所エネルギー解析手法にBader積分法を導入することでその精度をさらに向上させた。これにより粒界だけでなく点欠陥やその他の格子欠陥についても妥当な結果が得られるようになった。また、粒界の解析において、古典分子動力学法で良く用いられているEAM原子間相互作用ポテンシャルにより算出される局所応力、局所エネルギーと、本手法による局所応力、局所エネルギーとを比較した。その結果、CuについてはEAMは妥当な局所応力およびエネルギーを与えるが、Alについては妥当な結果を与えないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バルクナノメタルのユニバーサルな基礎物性設計指針の確立が主たる目的であるが、純金属について、当初の予想を超える知見が得られており、予想以上の進展を見せている。一方、合金のナノメタルについては、精度を確保するために慎重に進めており、当初の予定に対してやや遅れをとっている。これらを総合して、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、基礎物性設計指針の確立に必要な解析手法を確立し、それらの有効性の確認やそれらを用いた解析を、純金属のバルクナノメタルについて実施してきたが、より普遍的な基礎物性設計指針の確立に向けて、今後は、合金系や不純物を含む系について解析を拡張する必要がある。そのためには、電子状態計算と古典分子動力学法を結ぶ第一原理原子間ポテンシャル作成のための効率のよい手法の開発を進める必要がある。なお、この点については、当初から予測されていたことでもあり、それほど大きな問題点ではない。
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