研究領域 | バルクナノメタル ー常識を覆す新しい構造材料の科学 |
研究課題/領域番号 |
22102003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
尾方 成信 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20273584)
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研究分担者 |
香山 正憲 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 首席研究員 (60344157)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | バルクナノメタル / 第一原理計算 / 基礎物性設計 / 粒界 / 欠陥 |
研究概要 |
(1) バルクナノメタル(Cu結晶)の高温での変形挙動の理解をさらに進めるために、分子動力学法による原子拡散解析を実施し、以下の重要な知見を得た。1) 原子拡散は粒内に比べて粒界面で活発となり、さらには、粒界3重点で最も活発になる。2) バルクナノメタルの原子拡散の有効活性化エネルギーは粒径に依らず一定である。3) 有効拡散係数の粒径依存性はMaxwell-Garnett則を用いることで首尾よく表現できる。4) 拡散の活性化体積は原子サイズよりもかなり小さく、拡散は原子拡散というよりも自由体積の移動によって支配されている可能性がある。 (2) 高強度、高延性バルクナノメタル設計に向けての基礎的知見の獲得を目的として、ナノ結晶と金属ガラス(合金)によって構成された3次元ナノブロック構造体に対する力学応答および変形挙動を分子動力学計算により解析した。その結果、複合体全体の体積が一定の条件のもとでは、ある体積分率で強度が最大となることがわかった。また、変形時の原子構造の変化からその変形メカニズムを原子論的に明らかにした。これらの解析により、バルクナノ構造体の設計指針確立に向けての基礎的知見を得た。 (3) A01ア班との連携により、HCPナノ結晶特有の変形メカニズムに関して力学の観点から詳細な検討を行った。そして、HCPナノ結晶では複数のすべり系が活動するという実験結果を説明するための分子動力学解析を実施した。 (4) 開発している第一原理電子状態計算に基づく局所応力・局所エネルギー解析手法のさらなる精度向上を達成するとともに、粒界の不純物析出問題に適用することに成功した。特に、Al、Cuの粒界へのSi、Mg偏析の解析から、このような局所エネルギー解析を用いることで、偏析エネルギー利得の起源や、元素による偏析傾向の違いを掘り下げて理解できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
バルクナノメタルの基礎物性設計に向けて、バルクナノメタルの基礎物性理解に不可欠な粒界特性や転位特性を原子・電子レベルから明らかにするとともに、HCP金属を利用した基礎物性設計の可能性や金属ガラスとナノ結晶のコンポジット化による基礎物性設計の可能性を新たに示すことができており、期待以上の進展を見せていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年は、粒界、転位、合金元素の効果、結晶サイズ効果、結晶構造による違いなどの各論についてさらに詳細な検討を進めるとともに、力学の観点から構造設計に向けた考察を行い、これら得られたすべての知見を総合して、バルクナノメタル設計に向けた指針をまとめる。
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