研究概要 |
1.研究の目的 巨大ひずみ加工プロセスや,相変態を含む加工・熱処理プロセスによるナノ組織生成への,強せん断変形を含む大変形あるいは変形方向の反転を含む大変形の影響を定量的に把握することは,バルクナノメタル創製の機構を把握するための重要なステップである.本計画研究班では、相変態を含む加工・熱処理プロセスによるバルクナノメタルの超微細粒組織形成を,計算機シミュレーション及び加工熱処理再現試験装置などを駆使した物理シミュレーションによって解明する. 2.本年度の研究内容 発足初年度にあたる平成22年度は,物理シミュレーションを行うための基礎データ取得を目的とした数値シミュレーションと解析評価手法の確立を目指し,以下の4項目の研究を実施した. (1)新たなコンセプトに基づく物理シミュレーションである「強せん断変形変態形成組織試験法」を新たに提案し,試験法について検討を行った.この試験方法は,熱間せん断加工途中止めすることで大せん断変形を与え,さらに加工中および直後冷却との組み合わせ,強せん断変形⇒相変態の変形・温度経路がバルクナノメタルの創製に及ぼす影響を定量的に明らかにするものである.ここでは,温度制御方法,ならびに新規に導入した顕微鏡による組織観察方法に検討を加えた. (2)組織微細化には強圧下が必要であるが,単に強圧下するだけでは効率的な組織微細化は実現できないため,ひずみ制御された圧延条件を探索することが必要である.本年度はARBを想定した薄板圧延で導入される相当ひずみやせん断ひずみの分布と圧延条件の定量的関係を明らかにした. (3)ナノバルクメタルや高強度金属材料の機械的特性評価の手段として,破断直前まで(塑性変形限界)の真応力-ひずみ関係を明らかにすることが重要である.今年度は,結晶構造の異なる様々な金属材料を用いて,塑性変形限界の真の応力-ひずみ関係を断続引張試験法により取得した. (4)格子模様をマーキングした試験片を用いて冷間せん断加工を行い,変形挙動をトレースし,結晶塑性有限要素法の境界条件として集合組織を解析可能な計算モデルを構築した.次年度に導入する連続熱間せん断加工装置の設計を行った.新規に導入した顕微鏡で表面性状と導入されたひずみとの関連を検討した. 3.次年度以降の方針 次年度は,物理シミュレーションの高精度化に向けた研究を継続する.さらに,真の応力~ひずみ関係の取得法を引き続き研究し,これをもとに強加工プロセスの歪や組織の計算機シミュレーションの確立に向けた研究に着手する.
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