研究概要 |
優れたバルクナノメタルの創製を高効率に行うためには,変形や温度がバルクナノメタル創製に及ぼす影響の定量的な把握と,これをもとにしたバルクナノメタル創製機構の解明が必要である.また,バルクナノメタルが具備すべき重要な特性である延性あるいは塑性加工性を保つためには,相変態を含む加工熱処理プロセスからのバルクナノメタル創製も重要な課題である. 本計画研究班では、相変態を含む加工・熱処理プロセスによるバルクナノメタル創製を,計算機シミュレーションと物理シミュレーションによって,金属学(metallurgy)および加工学(forming)に基づき多面的に検討し,新プロセス提案(synthesis)に繋げるべく定量的に解明(analysis)する.材料としては,単純組成鉄鋼(0.15%C-0.2%Si-1.4%Mn),ならびに0.03%Nb添加鋼を対象とする. 『塑性変形限界の真の応力-ひずみ関係に関する基礎データの確立』『強せん断変形によるバルクナノメタル創製の物理ミュレーション』『加工ひずみ制御によるバルクナノメタル創製の有限要素シミュレーション』『塑性加工限界のマルチスケールシミュレーションのための基礎データの確立』を研究課題として、昨年度に引き続き研究を実施した.一連の共同研究により明らかとなったことを以下にまとめる。 (1)0.15%C単純成分鋼より結晶粒径が1ミクロン以下の超微細粒鋼を作製し,同様の方法により塑性変形限界に至るまでの真の応力-ひずみ関係を取得し,真の応力-ひずみ関係におよぼす結晶粒径の影響について検討した. (2)熱間でせん断試験(SPD)を行える実験手法して「中止めせん断加工試験法(Interrupt shearing test)」を新たに提案し,試験方案の確立のためNb鋼による試験を行った,加工温度,加工速度,冷却速度などのパラメータを変化させた試験結果により,ナノ組織形成機構を考察した. (3)3サイクル繰返したARBプロセスのFEAを行い,板厚に沿った相当ひずみの分布を検討した.ARBについてはロール径がひずみ量に大きく影響することを明らかにした. (4)加工中の付加方向の反転,繰り返し加工,加工後の試験片の速やかな取り出しを可能とするフリーモーションECAE加工装置を提案し,その開発を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以後は,以下の研究を実施する。各種の大ひずみ加工のひずみの定量解析,大ひずみ加工後の組織形成過程の定量解析を行う。溝ロール圧延ならびに中止めせん断加工試験法による物理シミュレーションを行い,バルクナノメタル生成とその過程の解明を試みる.フリーモーション熱間ECAE試験機を開発し,巨大反転変形を受けた材料の相変態前後の結晶構造変化を明らかにすることで,巨大ひずみ加工の加工限界を明らかにする研究に着手する.鉄鋼材料とアルミを中心に溝ロール圧延やECAE法など超微細粒組織を創製できる巨大ひずみ加工や新開発の物理シミュレーションによって作製された試験片について,「断続引張試験法」によって破断直前まで(塑性変形限界)の真の応力-ひずみ関係の測定を行うことで,「バルクナノメタル創製の計算機・物理シミュレーション」のための基礎データを確立するとともに,引張強さ,均一伸びとは異なる視点からの変形特性についての整理を行う.
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