研究概要 |
発足初年度にあたる平成22年度は,粒界の転位源としての役割に注目し以下の事項について研究を進めた.【1】原子モデルにより得られた<112>傾角粒界構造に対してDSC格子を用いてその粒界に含まれる粒界転位を見出し,粒界転位源能力に対して粒界転位の成分が強く関与していることを明らかにした.【2】破壊じん性値に対する粒界の役割を検討するために,き裂近傍に粒界を含む解析モデルに対して分子動力学シミュレーションを実施し,得られる結果と転位論や遮蔽理論を用いて多角的に解析し,粒界から転位が放出する現象と,それに伴う粒界構造の遷移現象が結晶粒微細化微細化に伴う破壊じん性値の向上を説明できる可能性を示した.【3】粒径が小さくなるほど粒界会合部の領域も増加するため,粒界会合部近傍の塑性現象を分子動力学シミュレーションにより検討を始めた.低温において粒界すべりは粒界転位のすべり運動により生じることを確認し,それらの転位が粒界会合部に蓄積することで,応力集中を形成し,粒界会合部から転位が放出することを確認した.このとき,粒界会合都の自由体積が転位放出能力に強く関与していることを確認した.【4】結晶粒径がサブミクロン化に伴い初期降伏応力は増加するが延性が低下することが確認されているが,そのメカニズムは明らかになっていない.そこで転位源としての粒界の役割を考慮し,転位密度が極めて低い結晶粒において流れ応力が増加することを表現できる臨界分解せん断応力モデルを構築し,FEM解析を実行し粒径に依存した変形挙動の違いを検討した.
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