研究領域 | 対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象 |
研究課題/領域番号 |
22103003
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
石川 修六 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90184473)
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研究分担者 |
野村 竜司 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (00323783)
東谷 誠二 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (70304368)
三宅 和正 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (90109265)
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キーワード | 超流動ヘリウム3 / 奇周波数クーパー対 / 奇周波数超伝導 / 固有軌道角運動量 / 表面マヨラナ状態 / エアロジェル界面 / 異方的超流動・超伝導 / 負マイスナー効果の問題 |
研究概要 |
石川は,超流動^3He-B相に接するエアロジェル界面でのNMR実験において,24barの圧力T/Tc~0.2という低温度で,帯磁率のわずかな増大を観測した.奇周波数対に起因する帯磁率の増大と関連する現象かどうかさらに詳しく調べる必要がある.A相の固有軌道角運動量検出実験では,細い円筒容器内にMermin--Hoテクスチャーを安定に作ることに成功した.励起スピン波周波数の回転角速度依存性は,固有軌道角運動量の存在を示す理論計算結果と定性的に一致している. ^4He薄膜で壁をコートすることにより^3He準粒子の散乱条件を制御することは、表面マヨラナ状態の検証で重要な要素となることを示してきたが,そのミクロな機構は明らかでなかった。野村は,壁の鏡面度の上昇が、^4He薄膜の超流動転移によること、およびその超流動転移温度が圧力により抑制され、量子臨界点以上の高圧で強相関効果により超流動性が消失することを明らかにした。 東谷は,超流動^3Heの表面状態密度と表面に形成される奇周波数クーパー対の振幅とのに厳密に成り立つ関係式を導き、この関係式に基づいて従来の実験を再検討することによって、超流動^3Heの表面に奇周波数クーパー対が実際に存在していることを明らかにした。 三宅は,奇周波数超伝導の開襞以来の病理とも言うべき「負マイスナー効果の問題」を解決した。また,自己エネルギーの(強結合)効果まで取り込んでも、反強磁性との共存相では、奇周波数超伝導は安定に存在可能であることを示した。次近接の電子に引力が働く2次元正方タイトバインディングモデルに対してBogolubov-de Gemes方程式を解いて、カイラルp波超伝導体(Sr_2RO_4など)の固有磁気モーメントM~μ_BNであることを示した。ただ、この磁気モーメントはマイスナー電流によりほぼ完全に打ち消される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異方的超流動^3He-A相での固有軌道角運動量と渦構造の生成については,新しいセルを用いた実験データ(スピン波励起周波数の回転角速度依存性)が得られ,理論研究での新しい計算結果と定性的な一致をみた.奇周波数クーパー対をもつ新奇超伝導・超流動状態の研究は,理論研究での2つの進展(超流動^3He-B相に接する不純物中液体界面やバルク物質中の奇周波数超伝導・超流動の安定性と実験研究での1つの進展(奇周波数対に起因すると考えられる帯磁率増加)があった.これらは当初計画通りに進展していると考えている.カイラルエッジ質量流や半整数量子渦に関する理論研究の進展があったが,実験的研究は準備段階にとどまっている.薄膜超流動に関する研究では,異方軸の纐卸に関する新たな実験データ,また界面での散乱条件決定のキーポイントとなる^4He薄膜の効果に関する結果が得られた.これらのことより総合的に判断して,順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
新奇現象の存在を示すいくつかの実験結果が得られてきた点については,理論研究との共同検討を進めていく. 準備段階である実験研究課題は,今年度中での測定開始を目指して準備を進める.
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