研究領域 | 対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象 |
研究課題/領域番号 |
22103003
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
石川 修六 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90184473)
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研究分担者 |
野村 竜司 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (00323783)
東谷 誠二 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (70304368)
三宅 和正 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90109265)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超流動ヘリウム3 / 巨視的固有軌道角運動量 / 奇周波数超伝導・超流動 / マヨラナ準粒子 / 表面帯磁率 / NMR(核磁気共鳴) / 反強磁性スピン波 / 異方的超流動 |
研究実績の概要 |
石川は、回転する異方的超流動ヘリウム3-A相において観測可能と予想される巨視的固有軌道角運動量の検出NMR実験を博士研究員の國松と進めその証拠を示す結果を得た。巨視的固有軌道角運動量の問題とは1つのクーパー対の持つ観測出来ないほど微少な軌道角運動量が揃うときに、全体では観測可能かどうかであり、発見以来の重要問題である。またエアロジェルと超流動ヘリウム3の接合界面に形成されると予想される奇周波数s波クーパー対の検出実験を高圧力下で行い、この新奇クーパー対出現の兆候を示す実験結果を得た。 分担者の野村は、磁場下でのトポロジカル相転移にともなうマヨラナコーンのギャップ生成の観測を目指して、磁場中での超流動ヘリウム3-B相の横波音響インピーダンス測定用実験セル、融解圧温度計、希釈冷凍器、核断熱消磁冷凍器の整備を進めた。またこのギャップ生成を表面帯磁率の増加として観測するためのNMR装置の整備と平行平板型実験セルの作製も行った。 分担者の東谷は、超流動3Heの一部をエアロジェルで満たした系の磁気応答を計算し、この系のパウリ帯磁率が界面での奇周波数s波クーパー対の形成に伴い増大すること、この常磁性効果は帯磁率の温度依存性を通して観測できることを示した。また博士研究員の竹内は、超弦理論におけるブレーンの対消滅によるタキオン凝縮と類似の現象が、2種類のボーズ気体から成るボーズ・アインシュタイン凝縮系の相分離状態で起きることを理論的に示した。 分担者の三宅は、反強磁性スピン波に媒介される相互作用により誘起される奇周波数超伝導の安定性について、 次の2点を明らかにした。(1)秩序状態における強結合効果(自己エネルギーの周波数依存性の効果)を考慮してもp波スピン1重項奇周波数超伝導状態は実現可能である。(2)同超伝導転移温度の不純物散乱に関する効果はAG公式による抑制効果に比べて4倍ほど弱い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的はスピン三重項p波超流動ヘリウム3の新奇現象を探求し、トポロジカル量子現象としての普遍的概念の構築を目指すことである。学術雑誌への投稿はまだであるが、固有軌道角運動量に関する実験では、実験はほぼ終了し論文としてまとめる段階である。エアロジェル界面に形成されると予想されている奇周波数s波クーパー対の検出実験は、液体の圧力を高くしたことにより低圧力では観測されなかった帯磁率の増大現象の結果を得た。これに関する理論的考察では、このような界面では奇周波数s波クーパー対により帯磁率が増大することを示しており、まさに実験結果を支持しており、実験と理論の共同研究として着実な進歩がある。B相でのマヨラナ型準粒子に対する磁場効果を明らかにする実験では未だ結果が出ていないが、その測定準備が順調に進んでいる。さらに奇周波数超伝導に関する理論研究では、強結合効果、不純物に関する安定性について進展があった。また、超流動ヘリウム3での固有角運動量に対する理論考察も行われた。 一部では研究が若干順調でないところもあるが、目的達成にむけた研究は大きな問題も発生せずに着実に進んでおり、概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究目的を達成するために研究計画の変更はない。 石川は、異方的超伝導Sr2RuO4で初めて観測が報告された半整数磁束量子に対応する新奇量子渦状体である「半整数量子渦」を、同様な異方性を持つ超流動ヘリウム3ーA相で観測するための準備を行い、回転実験装置で検出を試みる。エアロジェル界面で形成される奇周波数s波クーパー対の検出実験をさらに進展させるための新しい測定セルの準備を行う。 野村は、超流動ヘリウム3-B相におけるマヨラナコーンのギャップ生成を、超音波による力学的応答およびNMRによる磁気的応答の二つの測定方法で多角的に捉えることにより、表面束縛状態の性質を明らかにする。 東谷は、奇周波数超流動に特徴的な現象である増強パウリ常磁性の実証に向け、実験グループとの連携をさらに密にするとともに、奇周波数クーパー対が運ぶ質量流などの新たな課題に取り組む。 三宅は、以下の課題に取り組む。(1)カルテット・セクッステット・オクテット超流動状態に対するGL理論の構成。(2)重い電子系における電子格子相互作用および電子ガスにおける長距離クーロン相互作用にもとづく奇周波数超伝導の可能性の検討。(3)固有角運動量について、系のサイズと磁場侵入長の大小関係によってマイスナー カレントによる固有角運動量の相殺の程度を定量化する。
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