研究領域 | コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
22104005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
押山 淳 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (80143361)
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研究分担者 |
宮崎 剛 物質材料研究機構, 計算科学センター, 主幹研究員 (50354147)
尾崎 泰助 北陸先端科学技術大学院大学, 先端融合領域研究院, 准教授 (70356723)
岩田 潤一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特任講師 (70400695)
土田 英二 産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究員 (50357521)
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キーワード | 密度汎関数理論 / 第一原理計算 / オーダーN / ナノ構造 / 電子状態 / コンピューティクス |
研究概要 |
本研究では、量子論の第一原理に立脚した、実空間アプローチとオーダーN法を計算手法の軸にすえ、ナノメートル・スケールの複合構造体のナノ形状と電子機能の複合相関と非平衡ダイナミクスの解明、および新機能を有するナノ構造体の提唱を行うことを目的としており、23年度は以下の成果が得られた。 1.密度汎関数法計算を実空間で実行するRSDFTコードを「京」コンピュータ上で高速化し、「京」全体の70%程度のリソースで100,000原子系に対する電子状態計算を実行し、ピーク性能比44%の高効率を実証した。また、全体の1%程度のリソースにより、Si10,000原子電子状態計算は24時間以内で終了することも実証した。このRSDFTコードにより、Siナノワイヤーの電子状態が解明された。これらの成果に対して2011年Gordon Bell Prizeが授与された。 2.密度行列の最適化に基づくオーダーN手法であるCONQUESTを、マルチゴア超並列コンピュータ上で高速化した。ファン・デア・ワールス力の記述のためのDFT-D2法、局在軌道の最適化手法の実装を行い、イオンチャネルgramicineAに対する構造最適化計算を行い、古典的な力場による解析の限界を明らかにした。 3.OpenMXコードの大規模系への拡張の目的で、オーダーN厳密交換汎関数の開発と、高精度擬ポテンシャルおよび局在基底関数の開発を行い、その有用性を実際の応用計算で確かめた。 4.大規模電子状態計算の高速化をはかるために、混合精度演算の可能性を検証した。単精度実数を用いることにより、全体として30%以上の高速化が達成された。 以上の手法開発を活用し、炭素ナノチューブのサファイア面上での整列機構解明、Siナノワイヤー電子状態の断面形状依存性、Si結晶中の原子拡散の機構と拡散係数の定量的決定、などの成果をあげた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)実空間のCPMD法の開発は順調に進展しており、1,000原子系のCPMDが実際的なリソースと時間で可能になっている。さらなる高速化を目指す (2)CONQUESTの「京」上でのハイブリッド並列化は順調に進展し、10,000ノード超での超並列計算が可能になっている。
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今後の研究の推進方策 |
23年度までに、重要なコードについてのマルチコア・超並列コンピュータ上での高速化が進展した。今後は多機能化をはかるとともに、物質科学的に重要なターゲット、シリコン、ゲルマニウム系、炭素ナノ系、ソフト物質系等に対する先端的な電子状態計算を実行し、物質科学の発展に寄与する。また、AO2研究項目の渡邉計画研究班との共同で、輸送係数計算コードの開発を計画している。また公募研究平山班の実験研究との共同で、銀表面上siliceneの物性解明が進んでいる。
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