研究領域 | コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
22104005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
押山 淳 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80143361)
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研究分担者 |
宮崎 剛 独立行政法人物質・材料研究機構, 理論計算科学ユニット, グループリーダー (50354147)
土田 英二 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (50357521)
尾崎 泰助 北陸先端科学技術大学院大学, シミュレーション科学研究センター, 准教授 (70356723)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 密度汎関数理論 / 第一原理計算 / オーダーN / ナノ構造 / 電子状態 / コンピューティクス |
研究概要 |
本研究では、量子論の第一原理に基づく実空間アプローチを計算手法の軸とし、ナノスケール構造体での複合相関と非平衡ダイナミクスの解明、および新電子機能を有するナノ構造体の提唱を行うことを目的としている。計算手法の側面での25年度の成果は以下のとおり。① 京コンピュータ上で高速化を行ってきたRSDFTコードへの、ハイブリッド相関交換エネルギー汎関数の導入などの高機能化、②Car-Parrinello分子動力学法(CPMD)計算を実空間で実行するRS-CPMDコードの開発と京コンピュータ上での高速化、③ 密度行列の最適化に基づくオーダーN手法であるCONQUESTコードにおける、基底関数系の最適化手法の開発とBorn-Oppenheimer分子動力学法計算コードの実装、④ 多機能オーダーN法コードであるOpenMXへの、最小通信量をもつ新たなFFT並列化手法とband unfolding法の実装、⑤ 有限要素法第一原理計算コードFEMTECKにおける新たな高速積分法の導入とその有効性の検証。以上の手法開発成果を活用し、① Si(111) 面上超伝導In原子層の構造決定と電子状態の解明と実験の説明、② エピタキシャル成長で自己組織的に出現するナノファセットの成因解明と実験的に見られる魔法ファセット角の説明、③ グラフェンに変わる材料としての基板上シリセンの構造と電子状態の解明と実験との比較、④ グラフェンの酸素エッチングによるナノ加工の機構解明、⑤シリコン基板上のグラフェンシートの電気伝導における界面構造の重要性解明、⑥互いにねじれた二層グラフェンにおけるディラック電子の局在化の発見、⑦ 半導体ナノワイヤーにおける半導体と酸化膜界面の構造モデリング、⑧ 超イオン伝導体Mg(BH4)2における陰イオンの置換による超イオン伝導の増大予測、などの物質科学分野での成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RSDFT、RS-CPMD、CONQUEST、OpenMX、FFMTECHという特色あるソフトウェア群が、マルチコア超並列アーキテクチャのスーパーコンピュータ上で高速化され、また多機能化も順調に進んでいる。これらの開発研究により、世界でも類を見ない大規模高速計算が可能になってきた。物質科学のブレークスルーを目指すべく、半導体ナノワイヤー、炭素ナノ物質等への応用計算が実行され、学術雑誌に発表されるととともに、国際学会の招待講演を行っている。今後はさらに、科学的、工業的に重要な物質群に対する精力的な応用計算が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
計算手法の開発の側面では、2020年達成を目処に国家的事業として計画されているエクサスケール・コンピューティング計画と呼応し、新たなアーキテクチャに対応したプログラム開発も重要となる。本新学術領域の研究期間内には、こうした新たな開発は不可能ではあるが、将来的な進展を見据え、また次世代の研究開発につなげるために、GP-GPUなどの加速ハードウェア対応のアルゴリズムの検討を開始したい。また、物質科学の観点からは、持続するテクノロジーを支える省エネデバイス材料、特にパワーエレクトロニクス材料の喫緊の課題にターゲットをある程度絞り、物質科学と工学のブレークスルーを目指す。
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