研究領域 | コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
22104006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
常行 真司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90197749)
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研究分担者 |
大谷 実 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム部門, 研究員 (50334040)
吉本 芳英 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80332584)
山内 淳 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (90383984)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 第一原理分子動力学法 / 熱伝導 / 非平衡ダイナミクス / 原子間力モデル / モデリング / 電極反応 |
研究概要 |
本研究グループでは,材料およびナノ構造体の熱伝導度,熱膨張率,熱破壊の前駆現象,固液相変化とナノスケールでの相関や揺らぎ,分子固体中や分子/電極界面での電子移動による再配置エネルギーと電子移動度など,原子間相互作用の非調和性が本質的に重要となる大きな原子変位を伴う非平衡物理現象の予測とダイナミクスの解明を目指している。これらの物理量を意味のある統計量として計算し,物理現象を正しく理解・予測するためには,これまでにない大規模かつ長時間のシミュレーションと統計的なサンプリングが必要である。そのために平面波基底関数を用いた第一原理計算コードの整備と、構造とダイナミクス研究に必要な第一原理に基づくモデリング手法の開発を行ってきた。 今年度は平面波基底第一原理計算コードxTAPPの擬ポテンシャルを整備し、GUIと合わせた一連のプログラム群の一般公開を行った。またこれまでに開発してきた第一原理分子動力学法による非調和格子モデルの導出法と熱伝導率計算手法(3次非調和項による緩和時間計算)を用いて、様々な物質の熱伝導率の実証計算を行い、熱伝導率が高いSiから熱伝導率が低く熱電材料になるPbTe, Bi2Te3,クラスレート化合物BGGまで、4桁の範囲にわたって熱伝導率の物質依存性と温度依存性の定量計算が可能であることを実証した。さらに電解液を用いたデバイスの現実的なモデリングを可能にするSmooth-ESM法を完成させた。また第一原理計算に現れるブリリュアンゾーン積分のk点数に対する収束を早める改良テトラヘドロン法の開発、生体分子のように複雑な系の電子状態を精密にモデリングする手法であるFMO-LCMO法の改良を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度までに、本研究課題の基盤となる平面波基底関数を用いた第一原理電子状態計算プログラムxTAPPを整備し、一般公開することができた。また本研究課題で重点的に開発を続けてきた、第一原理に基づく格子熱伝導率の計算手法が完成し、実証計算によってその信頼性が確かめられた。本プログラムも最終年度での一般公開に向けて準備が進んでいる。固液界面の電気化学反応のダイナミクスを明らかにするためのシミュレーション手法についても、constant-μ法やSmooth ESM法の開発が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 非調和格子モデル作成用プログラムの実証計算を進める。また入出力およびマニュアルを整備し、プログラムの一般公開を目指す。 (2) 大規模自由度系の非調和格子モデル作成を可能にする逐次最適化手法プログラムを開発し、実証計算を行う。また不純物や欠陥を含む系の非調和格子モデル作成に向けて、クラスター展開法の導入を図る。 (3) 構造サンプリングによるモデルポテンシャル決定において、系の原子ごとのエネルギー分解解析ができると、モデル化の効率と精度の向上が期待できるため、この実装と実証を行う。 (4) xTAPPの拡張も前年度に引き続いて行う。 (5) 固液界面における電気化学反応の実証計算を進める。
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