研究領域 | コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
22104009
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
倭 剛久 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (90251587)
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研究分担者 |
光武 亜代理 慶応義塾大学, 理工学部, 助教 (00338253)
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キーワード | 分子シミュレーション / 電子状態計算 / 生物物理 / 計算物理 / 分子科学 |
研究概要 |
今年度は、蛋白質のシミュレーションから動的情報を抜き出すための解析手法の開発を行った。また、これまで開発してきた有効なサンプリング手法である拡張アンサンブル法を単純粒子の有限クラスター系やナノ細孔に閉じ込められた単純粒子系に適用することを試みた。そして、これらの研究に関して、成果として論文をまとめた。また、GPGPUの搭載した計算機を購入し、蛋白質ソフトウェアであるAMBERを用いて、生体高分子系のシミュレーションを行い、高速化について検討した。 タンパク質分子が機能するメカニズムを分子シミュレーションの手法で調べた。特にタンパク質反応の素過程に見られるエネルギー、電子、物質(プロトン、イオン、小分子)の移動に着目した。まず、酸素貯蔵タンパク質ミオグロビン中のガス分子移動機構を調べた。時間分解X線結晶解析とコンピューターシミュレーションを相補的に組み合わせた手法を開発した。そして、ガス分子をタンパク質分子内に配置するのに要する平均的なエネルギー、すなわちPotential of Mean Force (PMF)を求めることができた。さらに、3次元PMFマップを解析し、ガス分子移動機構を明らかにした。 次に、タンパク質中の電子移動反応を調べた。分子内にフラビンを結合する青色光受容体タンパク質のファミリーは、紫外線損傷したDNAを修復する酵素を含んでいる。それらの酵素はDNA修復のため電子移動反応を活用する。その効率的な電子移動反応の機構を、分子動力学シミュレーションと電子状態計算を用いて調べた。その結果、電子移動反応にとって重要なアミノ酸残基を推定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線実験の連携研究者との共同研究で大きな研究成果があがった。 GPGPUを活用した拡張アンサンブル法のソフトウエアが進行している。
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今後の研究の推進方策 |
GPGPUを活用した拡張アンサンブル法をさらに進展させる。 タンパク質機能の分子機構を、電子状態計算と分子シミュレーションの技法でさらに解明する。 タンパク質の多数の立体構造について電子状態を計算して、電子移動反応を解析するため、計算機プログラムを開発中である。
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