研究概要 |
密度汎関数法と強相関模型解法を融合し、従来の密度汎関数法では困難な強相関電子系を高精度、低負荷で取り扱える新手法開発を進め、実証研究の展開を準めた。 擬一次元・二次元系の物性解析のために次元縮約法を開発し、2次元有効模型の導出をLaFeAsOに対して行った。構造最適化や弾性定数の第一原理計算で重要となる応力テンソルの全電子フルポテンシャル線形化補強平面波(FLAPW)法での定式化を提案した。鉄系超伝導体の第一原理有効模型に対して、多変数変分モンテカルロ法を適用し、磁性秩序構造、秩序磁気モーメントの両方において定量的にLaFeAsOの実験結果を再現することを示した、LaFeAsOが磁気量子臨界点近傍にあることを第一原理的に立証した。Ca_4Al_2O_6Fe_2As_2の電子状態を密度汎関数法で調べ、LaFeAsOよりΓ点の周りでフェルミ面が1枚少ないことが分かった。PrFeAsO_<1-y>,BaFe_2(As_<1-x>Px)_2の光電子分光測定と第一原理計算から,鉄原子層に対するニクトゲン原子層の高さが低下するとd_<z2>バンドが上昇してフェルミ面への寄与が増し,フェルミ面の3次元性が増すことが示された.Ba_<1-X>K_XFe_2As_2,Ba(Fe_<1-X>Co_X)_2As_2,Ba(Fe_<1-X>Ni_X)_2As_2の電子ドープによりフェルミ面の3次元性が増すことも示された.スピン軌道相互作用の強い物質群の電子状態の研究も進んだ。2次元単一軌道系のモット絶縁体としては、銅酸化物がまず念頭に浮かぶが、Sr_2IrO_4が銅酸化物同様高い転移温度をもつ超伝導体になり得るかという可能性を考察することは非常に興味深い。相対論的第一原理計算によって構造最適化を行い、さらに電子状態計算の結果からワニエ軌道を作って、低耳ネルギー有効模型を構築し、動的平均場理論を用いて解析した。QMAS上でトポロジカル絶縁体や電気磁気効果を調べるため、平面波基底のPAWコードであるQMAS(http://www.qmas.jp/)上で相対論効果を考慮した第一原理計算プログラムの開発を進めた。FPLAPW-GWコードにスピン依存GW近似の実装を行った。また、スピン軌道相互作用のある系において第一原理計算と低エネルギー模型を組み合わせた電子状態計算のためのコードを整備した。
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