計画研究
密度汎関数法と強相関模型解法を融合し、従来の密度汎関数法では困難な強相関電子系を高精度、低負荷で取り扱える新手法を確立し、現実の多彩な物質群への広範な実証研究の展開を進めた。とりわけ鉄系超伝導体の電子状態を第一原理的に導出された4種の鉄系超伝導体(:LaFeAsO,LaFePO,BaFe2As2,FeTe)の有効模型に対して、多変数変分モンテカルロ法を適用して調べ、これら4つの物質の磁性に関する実験結果を再現することを示した。現実物質が巨大なモット絶縁体の辺縁部に位置することもわかった。またCa_4Al_2O_6Fe_2As_2の電子状態を解明し、不純物効果の微視的理解を目的として、LaFeAsOに対する不純物ポテンシャルの第一原理評価を行った。Ba_<1-x>KxFe_2As_2でx=0.4で全ての軌道が同等に超伝導に寄与していると考えられるのに対しx=1.0ではs±波超伝導となっていることを光電子分光で見出した。超伝導体の第一原理計算を芳香族超伝導体、フラーレン超伝導体、窒化物超伝導体で行ない、従来型超伝導としては理解できない要素を抽出した。スピン軌道相互作用の強い物質群の電子状態の解明も進め、Sr_2IrO_4、Ba_2IrO_4はスピン軌道相互作用と電子相関の相乗作用によって磁気秩序が生じてはじめて絶縁化するスレータ-絶縁体であることを明らかにした。Cd_2Os_2O_7へのLDA+U計算に着手し、現実的なUのパラメータ領域では反強磁性絶縁体で、all-in/all-out磁気構造が安定であること、強い磁気異角性(single-ion anisotropy)をもつことを見いだした。また水銀カルコゲナイドの研究に基づき、スピン軌道相互作用を取り入れたGW近似はトポロジカル絶縁体一般の準粒子バンド構造の定量計算ツールとして有望であることを示した。トポロジカル絶縁体の物理の理論と光電子分光の両面からの研究も進めている。多バンド強相関物質について角度分解光電子分光を行い,第一原理計算との比較から電子相関効果を議論した.
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画を超えて、MACE(第一原理強相関電子状態解明法)の適用が広範に進み、鉄系超伝導体、スピン軌道相互作用の強い物質などでの研究が大きく進展した。
今後非平衡状態解明のための手法開発を進める。また光電子分光とMACEとの融合研究、トポロジカル絶縁体での興味ある物性の予測と設計を進める。
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すべて 雑誌論文 (21件) (うち査読あり 21件) 学会発表 (21件)
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