計画研究
密度汎関数法と強相関模型解法の融合により、強相関電子系を第一原理的に扱う標準手法が大きく前進した。この手法を多彩な強相関電子系に適用し、物理の解明に成功してきている。平成25年度はこの手法をさらに発展させて展開し、ネオジウムを含む強磁性体の磁化や磁気異方性を決める機構を解明し、窒素添加の効果について解明した。またスピン軌道相互作用が扱えるように手法を開発した。以下に大きな進展のあった課題を挙げる。「方法論の開発」(1)スピン軌道相互作用の強い系を扱えるように手法を拡張した。(2) HiLAPW法のコード開発(3)電子格子相互作用系のab initio downfolding法の開発と応用:格子の自由度も考慮にいれたab initio downfoldingの方法(制限密度汎関数摂動論)の開発を行い、鉄系超伝導体とフラーレン超伝導体への適用をおこなった。(4)時間分解光電子分光の理論解析手法の開発:時間分解光電子分光は、ポンププローブ法により、光により励起された電子の緩和の様子を実時間で調べられる手法である。この実験で励起電子の実時間発展プロセスを理論的に調べる手法の開発を行なった。上記手法を応用して以下の成果を得た。(1)ネオジウム鉄強磁性体NdFe12, NdFe11TiおよびNdFe11TiNの磁化、磁気異方性の機構解明(2)有機伝導体におけるプラズモン効果の解明(3)プラズモン機構による超伝導機構の第一原理的解明(4)鉄系超伝導体の原子置換効果の解明(5) Bi(111)表面の表面電子状態について第一原理計算に基づき解析を行った。角度分解光電子分光実験により観測されたバルクバンドのギャップ中に現れる強度の弱いRashba型のバンド構造に対して、表面上に二重層成長した三角島構造のエッジに局在した一次元バンドであることを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
MACE(第一原理強相関電子状態解明法)の適用が広範に進み、鉄系超伝導体の超伝導機構解明のさらなる進展やスピン軌道相互作用の強い物質、特にイリジウム化合物での第一原理的計算によりスピン液体の形成条件が明らかにされ、またイリジウム化合物に生じる磁気相中での磁壁がトポロジカルな性質を示すことを示した。また電子格子相互作用と強い電子相関を持つ系の第一原理的な解明のための手法が進み、実時間光電子分光の解析法の研究も進んだ。強磁性体の磁化、保持力の機構解明も進み始めた。カーボンナノチューブを例に取り、太陽電池の新たな効率的エネルギー変換機構の解明も進んだ。全体に当初の計画以上に進展している。
高温超伝導機構の解明を進める。スピン軌道相互作用が生む新たなトポロジカル相の究明を進める。実時間光電子分解の理論を構築する。太陽電池の高効率エネルギー変換機構を解明し更なる高効率変換の指針を得る。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (19件) (うち査読あり 19件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (23件) (うち招待講演 23件)
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